研究課題/領域番号 |
26810067
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
石割 文崇 東京工業大学, 資源化学研究所, 助教 (00635807)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 高分子化学 / 超分子化学 |
研究実績の概要 |
本研究で は、2次元のみの運動性を有する、剛直な平面ユニットをフレキシブルな2本の糸で連結した、構造明確なラダーポリマーである「zig-zag ポリマー」を開発し、その運動性の抑制に基づく物性を探索することを目的としている。初年度となる平成26年度には、zig-zag ポリマーの合成法の開発を行った。具体的には、既知化合物であるビスホルミルジベンゾ24クラウン8エーテル(DB24C8)から、5段階反応でシリル基で保護された環状のテトラオールモノマーを合成した。得られたモノマーはKFの存在下、重合反応をおこなうことにより、シリル基を系中で脱保護しながら重合を進行させることができ、目的とするポリマーを得ることができた。しかし得られたポリマーは溶解性に乏しく、溶解性を向上させる工夫も必要であることが明らかとなった。 また、上記の二重芳香族求核置換反応を鍵としたzig-zag ポリマー合成法の開発に加え、近年新たに報告されたPIM合成方法であるトレガー塩基形成反応を利用した重合方法を活用したzig-zag ポリマー合成法の開発についても検討した。トレガー塩基骨格は歪んだ構造をしておりたzig-zag ポリマーの構成ユニットとしては適切ではない。しかしトレガー塩基骨格はNアルキル化後、塩基で処理することによりアミナール炭素が求核攻撃され開環し、折れ曲がり構造の無いジアゾシン構造を形成することが知られている。このモデル反応として、既報に従い合成したトレガー塩基骨格含有PIMをメチル化し、水酸化ナトリウム水溶液で処理を行うと、定量的にトレガー塩基開環体を与えることを見出した。この結果はこのトレガー塩基開環反応を用いて目的のzig-zag ポリマーが容易に合成できる可能性を示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度は当初の計画通りのモノマー合成を行うことができたが、得られたポリマーの溶解性を向上させる工夫が必要であることが分かった。さらに、トレガー塩基含有ポリマーの分解反応という新たなzig-zagポリマー合成法も見出すことができた。このように、初年度にzig-zagポリマーの合成方法の開発に成功したと言えるため、概ね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
トレガー塩基骨格開環反応を用いたzig-zagポリマー合成法を確立する。得られたzig-zagポリマー関して、その二次元運動性に基づく物性を以下の手法により調べる。 1. Zig-zag ポリマーの動的性質 溶液中における zig-zag ポリマーの挙動について、希薄溶液を用いた静的光散乱(SLS)・動的光散乱(DLS)、濃厚溶液を用いた動的粘弾性測定(DMA)などにより多角的に調べ、運動性の抑制がポリマーの動的挙動に与える影響を明らかにする。ポリマー単体の性質に加えて、カーボンナノチューブなどに対する巻付き挙動なども調べる。 2. Zig-zag ポリマーの静的性質 2次元の運動性を有する zig-zag ポリマーは、固体状態においては規則性の高い秩序構造を取ることが期待される。すなわち、高い結晶性や液晶性を有する可能性がある。ポリマーの集合形態は、示差走査熱量計(DSC)、偏光顕微鏡(POM)、X線回折(XRD)などの測定により検討する。また、引っぱり試験、動的粘弾性測定(DMA)などから得られる実験結果を基に、zig-zag ポリマーの力学特性を評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度の研究の進度としては概ね順調に進行していると判断したが、実際は合成法の細かい検討などでだいぶ時間を費やすこととなったため、計画通りの予算使用とはならなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の平成27年度ではまず、新たに開発したzig-zagポリマー合成法により様々なzig-zagポリマーのライブラリーを集中的に構築するために、前年度から繰り越すことになった予算を試薬購入費などに当てる予定である。さらに、新たに開発した手法ではより容易に目的のポリマーが得られ、物性計測用の消耗品なども当初予定してた量よりも多く必要になってくると考えられるため、その繰り越し額をその費用に当てる予定である。
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