本研究では、ジアゾカルボニル化合物をモノマーとした縮合重合による新しいポリマー合成法の開発を目的としている。具体的には、(1)ジアゾカルボニル化合物のカップリング反応によるポリ(アリーレンビニレン)型共役系高分子の合成と(2)ジアゾカルボニル化合物のN-H挿入反応による定序配列型ポリマーの合成、の達成を目標に検討を行った。 最終年度は、上記(1)(2)ともに、前年度までに達成しているモノマー合成ルートの確立および低分子モデル反応での知見をもとに、実際に目的ポリマーの合成を試みた。 (1)では、前年度に行った低分子モデル反応において有効であることが明らかとなった遷移金属錯体を用いて二官能性ジアゾカルボニル化合物の縮合重合を行ったところ、目的のポリ(アリーレンビニレン)型共役系高分子を得ることに成功した。このポリマーは、ビニレン部位に二つのエステルを有するこれまでにない全く新しい構造のポリマーである。従来知られている合成法では合成できなかったため、高分子合成の進展という観点から非常に意義のある成果であると言える。加えて、得られたポリマーの光物性を調査したところ、ビニレン部が無置換の従来のポリ(アリーレンビニレン)に比べて特徴的な吸収・発光スペクトルを示した。今後さらなる詳細な調査が必要ではあるが、有機ELや有機電界効果トランジスタなどへの応用ができる可能性があり、今後の展開が期待される。 (2)では、前年度までに合成に成功している二官能性ジアミド化合物をモノマーとして用い、二官能性ジアゾカルボニル化合物とのN-H挿入反応を素反応とする縮合重合を行うことで、オリゴマーながら構造の明確なポリマーの合成に成功した。生成ポリマーの溶解性の都合から当初目的としていた構造のモノマーとは異なるため、定序配列型ポリマーとは言い難いが、新規な構造を有するポリアミドの合成に成功した。
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