研究課題/領域番号 |
26810072
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
西藪 隆平 首都大学東京, 都市環境科学研究科, 助教 (00432865)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 分子集合体 / 光造形 / 4Dマテリアル / 自己組織化 / 光ピンセット / 集光レーザー |
研究実績の概要 |
本研究では、所望のナノ構造を持つ材料を遠隔操作で製造できる新しい材料製造技術として集光レーザーを用いた分子集合体の造形を提案し、その取り組みとして分子集合体の構成要素となる分子の合成をおこなった。溶液中での分子集合体の造形が想定されたため、溶液中で分散可能な分子集合体を形成できる分子の合成が目標となった。本研究では構成要素の分子骨格として、合成的拡張性の観点から種々の置換基を導入できるアントラセンイミド構造をその骨格に採用した。また、レーザー光と分子との相互作用における協奏的な効果を期待して、アントラセンイミド骨格にアルキル鎖あるいは分子間水素結合による自己組織化の促進が期待されるウレア基を導入した一連のモノイミド化合物およびビスイミド化合物を合成した。アルキル鎖を導入したアントラセンモノイミド化合物およびウレア基を導入したアントラセンモノイミド化合物は、それぞれ板状および針状結晶を与え、溶液中に分散できる分子集合体の形成は認められなかった。また、アルキル鎖を導入したアントラセンビスイミド化合物はその高い溶媒溶解性から、溶液中での分子集合体の形成は観察されなかった。一方、ウレア基を導入したアントラセンビスイミド化合物は溶液中で分散可能な分子集合体を形成することが、吸収スペクトル測定およびその温度変化から示された。また、当該化合物が分子集合体を形成している溶液にフッ化物イオンを添加したところ、ナノサイズの繊維状構造体が形成することが蛍光顕微鏡、走査型電子顕微鏡および透過型電子顕微鏡観察から示され、当該化合物がナノサイズの分子集合体を形成する性質をもつことが確かめられた。以上の結果から、当該化合物を用いた集光レーザーによる分子集合体の造形が期待された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究の目的である集光レーザーを用いた分子集合体の光造形において、平成26年度の研究計画として分子集合体を形成できる分子の合成が実施項目として挙げられた。分子集合体の構成要素となる分子として、優れた合成拡張性を持つ芳香族イミド化合物を採用することで、様々な置換基を導入した化合物が合成された。それら化合物群を用いた自己組織化特性の調査から、溶液中で分散可能な分子集合体を形成する化合物を見出すことができた。当該化合物を用いた集光レーザーによる分子集合体の造形が期待されるとともに、溶液中で分散可能な分子集合体を形成できる分子を合成するための指針が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度に実施された研究で見出された、溶液中で分散可能な分子集合体を形成できるアントラセンビスイミドを用いた集光レーザーによる造形実験を実施する。レーザーとしてNd:YAG レーザー(1056 nm)を採用し、顕微鏡装置に取り付けることで集光されたレーザーを発生させ、アントラセンビスイミド溶液に照射することで、分子集合体の造形を試みる。合成された化合物は脂溶性であるため、造形実験においてはヘキサンやジクロロメタンといった有機溶媒の溶液が使用される。本実験においては、これら有機溶媒によるレーザー光の吸収に伴うレーザーパワーの低下も懸念されるため、レーザー光の波長領域に吸収を持たない水を用いた実験に向けて、芳香族イミド骨格に親水性の置換基を導入した分子の合成をおこなう。
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次年度使用額が生じた理由 |
「旅費」において、当初参加を予定していた学会の日程が重なり、スケジュール上、一方の学会に参加することができなかったため。 「その他」において、本研究課題の遂行において使用した共通機器(核磁気共鳴装置、質量分析装置、透過型電子顕微鏡および走査型電子顕微鏡)で、当初想定された使用料が発生しなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
平成26年度に実施した研究結果から、水溶性の自己組織性化合物を合成する必要性が新たに生じたため、その合成をおこなうために使用する。
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