研究課題
ポリエチレングリコール/カチオン性高分子電解質のブロック共重合体に対し疎水性の異なる様々な官能基を修飾することで、タンパク質に対して多様な交差反応性を有した新規高分子化合物を合成した。さらに、これらのブロック共重合体をアニオン性のβガラクトシダーゼと混合し、酵素/ブロック共重合体間のポリイオン複合体(PIC)ライブラリを作製した。PICライブラリを配置したセンサーアレイにより、異なる哺乳類由来のアルブミンホモログを分析したところ、配列の70%以上が同一で構造が非常に類似しているにもかかわらず各アルブミンホモログに固有の酵素活性変化パターンが得られた。線形判別分析によって、得られたパターンを解析することで、96%という高い精度での4種のアルブミンホモログの判別に成功した。次に、合成したブロック共重合体を様々な性質のアニオン性酵素と混合して、新たなPICライブラリを作製し、細胞の培養に用いた培養液(馴らし培地)の判別を試みた。その結果、作製したセンサーアレイにより、がん細胞の種類(肺がん、骨肉腫、肝臓がん)の識別や肺由来の正常/がん細胞の識別などが可能なことが明らかになった。この結果は、PICライブラリで構成されるセンサーアレイを用いることで、馴らし培地に含まれる細胞分泌物の固有の組成を反映した応答パターンを抽出できることを意味する。したがって、本システムを用いることで、マーカー分子に関する情報を必要としない非侵襲的な幹細胞の品質評価が可能になることが強く期待できる。
2: おおむね順調に進展している
ブロック共重合体に対して種々のハロゲン化アルキルを修飾するアプローチにより、初年度の第一の目標とした、複雑な組成の馴らし培地を判別するためのPICライブラリの拡充を達成した。さらに、拡充したPICライブラリを用いることで、第二の目標とした馴らし培地判別法の開発にも成功した。以上の成果から、当初の計画通りに研究が進展したと判断できる。
初年度に開発したPICセンサーアレイを、分化させた幹細胞の系譜同定や未分化細胞の残留検査といった幹細胞評価に応用することで、本アプローチの適用可能な範囲を明らかにしていく。同時に、馴らし培地の分析に更に適したセンサーアレイ構築を目指した材料設計、たとえば酵素の人工的な改変、あるいは酵素反応以外を応答として利用するPICライブラリの開発を合わせて進めていく。
すべて 2014
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (2件)
Analyst
巻: 139 ページ: 6100-6103
10.1039/C4AN01398K
Asian Journal of Organic Chemistry
巻: 3 ページ: 1182-1188
10.1002/ajoc.201402129