研究課題/領域番号 |
26810076
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
大平 慎一 熊本大学, 自然科学研究科, 准教授 (60547826)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 多孔性金属錯体 / ガスセンサー / 光ファイバーセンサー |
研究実績の概要 |
従来,微量なガス成分の検出には,目的とするガス成分の化学的性質や物理的性質を捉える様々な手法が目的成分ごとに開発されてきた。目的成分をオンサイトやin-situに捉えるセンサーも多く開発されているが,選択性や感度における数々の問題を抱えている。本研究では,ガス成分に対する高い吸着特性を示す多孔性金属錯体(MOF)を感応剤とし,光源として使用するLEDの波長を目的ガス成分と感応剤とするMOFにあわせることで多くの成分に対応可能なガス成分検出のための基盤技術の開発を目指している。これまでに,MOFを感応剤とする超微量水分検出のためのシステムを開発した。これは,MOF材料として広く知られる銅-ベンゼンカルボン酸錯体(Cu-BTC)が水分子の吸着によって色の変化を示すことを見いだし,LEDやホトダイオードといった固体素子により色の変化を水分子のサンプリングと同時に吸光度変化を検出する手法である。試料ガスと吸光度検出のための光が多孔性金属錯体の感応膜を透過する小型検出セルを構築した。また,感応剤であるMOFをフィルター上に固定化する手法についても種々の検討を行った。その結果,MOFの微細結晶をフィルターの表面に極薄い膜状にして沈着したガラスフィルターが最も高い応答特性,感度と応答速度を示した。最適化されたセルと感応膜によってこれまでの水分センサに無い高い応答特性が得られた。今後の課題は,他の目的ガス成分に対して吸光度変化を示すMOFを感応膜として他のガス成分を検出することにより,本法が有用な基盤技術であることを実証することである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに,多孔性金属錯体(MOF)を感応剤とするオプティカルガスセンシングデバイスの基盤を構築できた。銅とテレフタル酸からなるMOFが極わずかな濃度の水に対しても色の変化を示す現象を見いだし,ガス成分の効率的な捕集と生じた吸光度変化をin-situに検出する機構を組み込んだセンサーにより産業用ガス中に不純物として含まれる微量なガス成分を効率的に検出できた。また,システム自体が低コストであることからセンサーシステムを多数構築して産業用ガスの製造や運搬,貯蔵における水分濃度検出を別途共同研究でも進めている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の今後の課題は,他の多孔性金属錯体を用い,他のガス成分への応用が可能であることを実証することである。そこで,次年度は,塩化水素ガスによって吸光度変化を示すことが知られるMOF 材料, [(TBB)2CoBr2(MeOH)(dimethylformamide)]により,塩化水素ガスの検出を試みる。一方,本材料は吸光度変化と同時に蛍光強度が変化することも知られており,新たに蛍光検出型のオプティカルガスセンサーを検討していく。これによって,自由な分子設計が可能であり,多くのガス種に対して応答するMOFを構築すれば,高感度かつ高速応答なセンサーを自在に構築できる基盤技術の確立を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度までで,ようやく多孔性金属錯体をセンシングマテリアルとするガス分析デバイスの基盤技術を構築できた。今後,予定より少し遅れているが,この基盤技術が他の対象ガス,多孔性金属錯体の組み合わせに対しても適応可能であることを実証する実験を進めていく必要がある。
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次年度使用額の使用計画 |
先述の様に,新しい対象ガスと多孔性金属錯体の組み合わせへの応用性,言い換えるならば,本研究で開発したセンシング技術の汎用性を評価を進めていく。そのために,多孔性金属錯体の合成に必要なガラス器具や試薬を購入して,実際に合成し,得られた化合物を評価していく。センシング材料としてのガス吸着特性とガス吸着に伴うケモクロミズムの発現,ひいては本研究で開発した基盤技術との組み合わせによるオプティカルガスセンサーとしての特性を評価していく。
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