研究実績の概要 |
有機イオン交換体と無機イオン交換体の特徴を合わせ持つ可能性がある配位高分子に着目し、配位高分子骨格で起こるイオン交換反応の解明と制御を目指して研究を進めた。27年度の実施計画に基づき、1)2種類のLn3+が形成するリン酸エステル配位高分子のネットワーク構造のゆがみを捉えるためのXAFS測定、2)リン酸エステル以外の配位子として2,5-ジヒドロキシベンゾキノン(H2dhbq)が形成する配位高分子におけるイオン交換特性を調べた。また、3)リン酸エステル配位高分子のモノリス化により、イオン交換反応速度が増大することを見出した。 1)リン酸エステル配位高分子中に共存する2種類のLn3+(Ln=Sm, Gd, Yb)に対してK吸収端の透過χk3スペクトルを測定した結果、Ybは共存Smの有無に関わらず同一スペクトルを与える一方で、SmはYb共存下でスペクトルが変化した。Ybの存在によってSmの局所構造が変わることを示唆しているが、詳細は現在検討中である。 2)H2dhbqとCe3+で配位高分子([Ln2(dhbq)3])を合成し、中心金属イオン交換反応の特性を調べた。Ce3+とLn3+の1:1イオン交換が起こることを確認できたが、リン酸エステル配位高分子のように、重希土類の選択性が極めて小さくなる傾向は認められなかった。選択係数および粉末X線構造解析の結果を現在解析中である。 3)リン酸エステル配位高分子のシクロヘキサンオルガノゲルを凍結乾燥することにより、モノリス配位高分子の調整と反応速度の増大に成功した。粉末X線構造解析とXAFS測定の結果から、中心金属であるLn3+の配位構造および結晶構造はオルガノゲル化とモノリス化の影響を受けないことがわかり、その結果、イオン交換選択性も変わらなかった。一方で、反応速度の増大は、マクロ孔ができたことによる水との接触表面積の増加によると考えられる。
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