研究課題/領域番号 |
26810081
|
研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
重田 香織(杉山香織) 独立行政法人産業技術総合研究所, 環境管理研究部門, 研究員 (20639744)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 単一細胞分析 / 元素分析 / 質量分析 / 誘導結合プラズマ質量分析計 / ドロプレット試料導入 / インクジェット / マイクロ流体デバイス / メタロミクス |
研究実績の概要 |
メタロミクス分野において,生体における微量金属元素の役割の解明を目指すため,細胞レベルで高感度かつ多元素の分析が可能な計測技術の開発が求められている。申請者は,溶液試料を従来のように噴霧するのではなく,インクジェット技術を応用し,微小液滴を一滴ずつICP 質量分析計のプラズマに導入するドロプレット試料導入法を開発し,この微小液滴に細胞を内包させプラズマ中に噴出することで単一細胞分析を可能とした。しかし,これまでの研究では,微小液滴に一細胞を内包させるため,試料を希釈することから,細胞を包含しない空のドロプレットが多く,測定効率が良くなかった。また,時間の経過とともに細胞が沈殿,凝集するといった問題が生じた。 そこで,本研究では,酵母細胞やiPS 細胞等の種々の細胞 (5~30 μm) を凝集・沈殿させず,かつ試料を希釈することなく再現性良くかつ選択的にプラズマに導入するため,マイクロ流体力学に基づく細胞ハンドリング技術を確立するとともに,これによって試料を希釈することなく,単一細胞を微小液滴に内包し,ICP 質量分析計のプラズマに導入する方法を開発する。 平成26年度は,マイクロ流体デバイス/ICP質量分析計を実現するため,ドロプレット試料導入のための高速スキャンシステムの開発を行った。ドロプレット試料導入による信号は極短パルスとなるため,従来のICP 質量分析計の積分時間 (10 ms 程度) ではノイズに埋もれ検出できない。開発した高速スキャンシステムでは,ICP質量分析装置の検出器から直接信号を収集し,カウント値の積分を行うことで,積分時間を従来の1000分の1以下に改善し,極短パルス状の信号 (0.5ms) を検出することに成功した。さらに,単一細胞導入チップの試作を行い,細胞の挙動を顕微システムで観察することで,ICP質量分析装置への適用に向けた指針を得た。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度の目標である,ドロプレット試料導入のための高速スキャンシステムの開発,単一細胞導入チップの試作を行い,ともに満足できるレベルで達成できていることから,本研究はおおむね順調に進展していると考える。
|
今後の研究の推進方策 |
平成26年度の成果である単一細胞導入チップのさらなる高機能化を図るとともに,ICP質量分析装置の試料導入部に接続する際のインターフェースの開発を行う。単一細胞導入チップをインクジェットディスペンサーと結合する際に予想される問題点に,インクジェットの圧力変動によるチップ内の流体の擾乱がある。これを解決するため,インクジェットの圧力の影響を低減可能な構造をもつ単一細胞導入チップを開発する。 さらに,単一細胞導入チップおよび高速スキャンシステムの実証のため,実試料として酵母等を用いて,細胞形態と必須微量元素濃度を測定し元素分布の解析を行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
調達方法の工夫などにより,当初の計画より経費の節約ができたため。
|
次年度使用額の使用計画 |
次年度,消耗品を補てんするために使用する。
|