研究課題/領域番号 |
26810083
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
藤野 智子 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (70463768)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | キメラ型RNA / トリアゾール / 錯形成 / RNA干渉 |
研究実績の概要 |
[具体的内容] 本研究は,siRNAの部分構造に,RNAの連結部をトリアゾールに置き換えたトリアゾール連結型RNA(TLRNA)を導入することで,高安定・高効率・簡便合成可能なsiRNA類縁体を開発することを目的とする.研究初年度である本年度では,TLRNA部を構築し,これを用いてキメラ型多量体合成法を確立した.この多量体をsiRNAとして用いたRNA干渉実験を行い,これがsiRNAとして機能することを明らかにした.
まずキメラ型多量体の部分構造となるTLRNA部の構築法を開発した.TLRNA部は連結ユニットである5'末端用単量体・3'末端用単量体,および伸長用単量体で構成される.本年度は4種の核酸塩基からなる両末端用単量体の合成法を開発し,伸長用単量体と併せて計12種のヌクレオシド誘導体の高効率合成法を開発した.続いてこれらの単量体どうしを付加環化反応により連結することで連結用TLRNA部を構築し,これをRNAの部分構造として導入してキメラ型多量体を合成した.キメラ型多量体は天然RNAと安定な二重鎖を形成し,その錯形成がTLRNA部と天然型構造とがエントロピー駆動型の錯形成であることを見いだした.さらにこの二重鎖をsiRNAとして用いたRNA干渉実験をin vitroで開始し,これがArgonauteの基質として働くことを実証した.
[意義・重要性] リン酸排除型RNAは,2'位ヒドロキシ基や核酸塩基の存在が合成上の制約となるためその機能化が極めて限られている.本研究では,官能基許容性の高い核酸伸長反応を活用することで,トリアゾール連結部を含むキメラ型RNA多量体の効率的・簡便合成法を実現した.今年度は,この新規分子の天然RNAへの錯形成能を明らかにするのみならず,その二重鎖が実際に酵素の基質として認識されることを実証することができ,次年度の効率的siRNAの探索研究のための最も挑戦的な課題をクリアすることができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
途中産前・産後休暇を取得したにも関わらず,順調に進み,今年度の計画内容は全て達成し,次年度に予定していた内容も開始することができた.特に,TLRNA部の導入位置を種々検討する事により,非天然型RNAの最も挑戦的な課題である「酵素の基質化」を可能とする構造を最適化できたことで,次年度以降の効率的siRNAの探索研究の迅速な遂行を可能とする知見を得ることができた.
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は当初の計画どおり,TLRNA部の導入効果の評価を行うことを目的とし,各種キメラ型多量体と天然RNAとの二重鎖をsiRNAとして用いたRNA干渉実験をin vitroで行い,TLRNA部の導入効果を明らかにする.これまで合成上の制約ゆえに実現し得なかった非天然型構造の導入位置・導入数・連続性による網羅的な構造活性相関解析が可能となると考えられる.これらにおいては特にsiRNAの抱える問題(不安定性,オフターゲット効果)に対して,効果的なsiRNA分子の設計指針を明らかにすることを目指す.ここではキメラ型多量体の毒性評価を行うとともにその分解経路についても明らかにすることで,siRNAの実用化のための構造の最適化を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は途中で,代表者が産前・産後休暇を取得したことにより,試薬の購入額が予定よりも少なかったため,残額の繰り越しを行った.
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次年度使用額の使用計画 |
繰り越し額は次年度に物品費(主に試薬)として使用する予定である.
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