本研究は、「細胞外pHに逆相関して細胞膜上により多くのプロトンを引きつけ・集積化する」好アルカリ菌の機構の解明目的としており、当初の計画通り高アルカリ条件下で細胞外の電極表面に電子を受け渡す好アルカリ電流生成菌の単離に成功し、in-vivo微生物電気化学を用いて呼吸鎖電子移動の速度論や電子伝達タンパク質の酸化還元電位のpH依存性に関しての追跡を行った。さらに、PacBioシーケンス法によってゲノム塩基配列の決定を完了し、現在論文化のために解析を進めている。これにより細胞膜にける電子伝達タンパク質の空間分布に関しての知見が得られることが期待される。また、速度論的知見を組み合わせれば、プロトン局在化モデルを提案できるはずである。細菌を単離した成果に関しては、"In situ electrochemical enrichment and isolation of a magnetite-reducing bacterium from a high pH serpentinizing spring"というタイトルで、Environmental Microbiology 詩へ投稿済みである(Manuscript ID EMI-2016-0677)。 また、比較として中性条件で電極表面に電子を受け渡すモデル菌である鉄還元細菌Shewanellaに関しても、プロトン局在性や電子移動速度に関しての検討を行った。前年度にペリプラズム内におけるプロトン濃度をin vivo電気化学によって予想する方法論を開発したが、生細胞内におけるプロトンの局在性を議論するためには電子移動律速過程の特定が不可欠である。そこで、微生物の電流生成時における律速過程を追跡する手法を開発した。同様の方法論を今後好アルカリ菌においても適用することで、現在Electrochimica Acta誌へ投稿中である(Manuscript ID EF16-054R1 under revision)。
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