研究課題/領域番号 |
26810086
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
正木 慶昭 東京工業大学, 生命理工学研究科, 助教 (00578544)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | RNA / 分子動力学計算 / 核酸医薬 / アンチセンス核酸 / 分子設計 / 修飾核酸 |
研究実績の概要 |
本研究では、変形能解析を用いた合理的な分子設計法を確立し、実証することで従来の修飾核酸より飛躍的に親和性を向上させた人工核酸の開発を目指す。そのために、分子動力学計算を用いた網羅的解析による分子設計のみならず、合成手法の開発および適宜設計した分子の実測値測定を行い、手法の妥当性の評価を行うことで計算精度および開発効率を向上させる。 本年度では、シアノ基やメトキシ基、カルバモイル基などの官能基とメチレン鎖によるリンカー構造を有する2'修飾基を36種類系統的にin silicoにて作成し、その影響を分子動力学計算と変形能解析を用いて評価を行った。その結果、シアノ基を有する修飾基は高い二重鎖親和性を有することが予測された。事実、実測値としてもメチル修飾基等と比べ、シアノエチル基修飾した核酸は標的となるRNAとの親和性が向上していることが明らかになっている。また、興味深いことに、特定の位置に非共有電子対が存在すると、二重鎖構造が不安定化されることが示唆された。これは本検討にもちいた核酸塩基であるウラシル環二位のカルボニル基酸素との静電的な反発に起因すると思われる。実験値としては2'水酸基に対しカルバモイル修飾を導入した修飾核酸は二重鎖を不安定化することがわかっており、矛盾しない。興味深いことにそれらの修飾基はミスマッチ塩基対を安定化する可能性が示唆されており、更なる検討が望まれる。以上のように本年度の研究により、変形能解析をもちいた手法は2'修飾基の分子設計法として有用であることが明らかとなった。次年度はこれまでの成果をもとに、立体配座固定等の親和性への影響を評価し、従来の修飾核酸よりも飛躍的に親和性を向上させた人工核酸の開発を達成する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では革新的な糖部修飾核酸の開発を目指している。平成26年度では当初の計画通り、網羅的な2'修飾基による影響の評価を行っている。独自に開発した変形能解析を用いて、シアノ基やメトキシ基などとリンカーの長さを系統的に変化させた36種類の官能基をin silicoにて作成し、ウリジンの2'部位に導入したのちにAMBER12をもちいて分子動力学計算を行なった。作成した官能基の電荷は Gaussian 09 を用い、RESP 法によって決定した値を用いた。また力場としてはgaff力場を使用した。その結果、その結果CN2をはじめとする修飾基が高い安定性を有することが予測された。事実、実測値としてもメチル修飾基等と比べ、標的との親和性が向上していることが明らかになっている。また、興味深いことに、特定の位置に非共有電子対が存在すると、二重鎖構造が不安定化されることが示唆された。これは核酸塩基部との静電的な反発に起因すると思われる。これらの成果に基づき、次年度においても当初の計画通り行なう。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度においても当初の計画通り研究を進める。本年度ではより挑戦的な糖部配座固定核酸による影響について評価を行う予定である。現在のところ糖部配座固定核酸に、独自に開発した変形能解析を適用した例はなく、挑戦的な課題である。これまで用いてきた核酸塩基対のゆらぎのみならず、複数のパラメータを取り込むことで、当初の目的を達成する予定である。また、実験値としては過去の文献に報告されている再近接塩基対パラメータなどの値を最大限利用し、効率的な評価を目指していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画では平成26年度から種々の修飾核酸の合成を行なう予定であった。実際に数種の修飾核酸の合成は行なったものの、当初の予定よりも初年度の検討として計算化学を中心とした評価に偏ったため、有機合成による実験的な評価に関わる経費において予算的に余裕が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
初年度に合成を実施できなかった化合物に関しても本年度において順次実施するため、引き続き有機合成費用として計上している。
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