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2015 年度 実施状況報告書

蛋白質液体の作成法の確立とその物性に関する研究

研究課題

研究課題/領域番号 26810087
研究機関東京工業大学

研究代表者

野島 達也  東京工業大学, フロンティア研究機構, 特任助教 (40721858)

研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2017-03-31
キーワードタンパク質 / 界面活性剤 / ソフトマテリアル / バイオマテリアル / 酵素材料
研究実績の概要

タンパク質とイオン性界面活性剤の液状複合体である「タンパク質液体」の作成方法とその物性に関する研究を行った。
タンパク質作成には陽イオン性および陰イオン性界面活性剤の両方を混合して用いることが有用であることが判明している。用いる陰イオン性と陽イオン性界面活性剤の市販の非イオン性界面活性剤よりの合成・精製方法を確立することができた。疎水部と親水部の構造の異なる界面活性剤を合成し用いることによって、体系的な物性解析が可能となった。
複合化したタンパク質と界面活性剤の定量分析手法を確立し、タンパク質に対する界面活性剤の数比を再現性良く求める事が可能となった。
タンパク質と2種類の界面活性剤の混合量比を細かく検討した結果、オイル状のタンパク質と界面活性剤の複合物質が発生を見出し「タンパク質凝縮体」と名付けた。タンパク質凝縮体の形成条件の解明と物性解析も進めた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

平成27年度は実験に用いる界面活性剤の合成方法と定量分析の方法論を確立することができた。
界面活性剤の合成方法として、市販の末端アルコールタイプの非イオン性界面活性剤の酸化剤AZADOLによる酸化によって、効率的に末端カルボン酸タイプの界面活性剤を合成する条件を確立した。さらに合成した陰イオン性界面活性剤にジアミンを縮合させる事による、陽イオン性界面活性剤の合成手法も確立した。陰イオン性および陽イオン性界面活性剤の精製にはどちらもアミノ化シリカゲルが有効であることを見出した。
タンパク質と界面活性剤の複合物の定量手法を確立した。複合物を食塩水と混合した後にアセトニトリルを加えると界面活性剤を効率的に抽出可能であることを見出した。抽出した界面活性剤の濃縮と溶媒除去には内部標準法による定量NMRにより精度よく定量することができた。
研究に用いるタンパク質として、GFP, RFP, EOTC, LiDps, Glucoseoxidase, Lysozyme, GroEL/GroES,TIPMDHなど様々なタンパク質の調製方法も確立した。
タンパク質液体調製の過程において、タンパク質を含む新規オイル状物質の形成を見出し、これをタンパク質凝縮体と名付けた。作製過程で透析や凍結乾燥を必要とするタンパク質液体に比べてタンパク質凝縮体はタンパク質水溶液と界面活性剤水溶液を混合するのみで、水相より自発的に液液相分離し形成された。タンパク質凝縮体の形成はタンパク質と混合する陰イオン及び陽イオン界面活性剤の比率と総量が重要であり、比率に関してはタンパク質の等電点との相関が見られた。タンパク質凝縮体の構造解析としてX線小角散乱測定を行った。その散乱プロファイルは明瞭なピークを示しており、内部秩序構造が存在することが明らかとなった。

今後の研究の推進方策

これまでにタンパク質液体作成の過程で、新規のタンパク質と界面活性剤のオイル状複合体であるタンパク質凝縮体の形成を見出した。タンパク質液体を報告した海外のグループからは、タンパク質凝縮体の形成と類似の現象は報告されておらず研究的な価値は高いと考えられる。タンパク質凝縮体はタンパク質液体と同一の材料より作成可能であるため、両者の研究を平行して進め比較することにより、相違点や新規性を明確にしていく。
これまでに確立した界面活性剤の合成法を用いて、様々な鎖長の疎水部と親水部を有する界面活性剤を合成する。合成した界面活性剤をこれまでに調製した様々なタンパク質と組み合わせて複合体(タンパク質液体・タンパク質凝縮体)を調製する。その物性や構造を各種分光法やAFM, SAXS, 電子顕微鏡観察等により分析する。分析結果を界面活性剤とタンパク質の種類ごとに解析し、その関連性を明らかにする。
新規のタンパク質含有材料として、応用利用性についても研究をすすめる。酵素活性を利用したリアクターやセンサーや酵素電池などを対象とする。

次年度使用額が生じた理由

所属部局において利用可能なタンパク質の調製に関わる機器(組み換えタンパク質生産のための微生物培養装置・精製システムなど)と界面活性剤合成に必要な機器(有機合成装置など)が導入されたため、予算を抑えることができ、繰越金が生じた。

次年度使用額の使用計画

実験に使用する消耗品、実験機器の購入、国内外への出張費などに当てる。

  • 研究成果

    (10件)

すべて 2016 2015

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件) 産業財産権 (2件)

  • [雑誌論文] Peptide sequences converting polyglutamine into a prion in yeast.2015

    • 著者名/発表者名
      Wataru Odani, Kzuhiro Urata, Momoko Okuda, Shunsuke Okuma, Hiroko Koyama, Chan-Gi Pack, Kei Fujiwara, Tatsuya Nojima, Masataka Kinjo, Shigeko Kawai-Noma and Hideki Taguchi
    • 雑誌名

      FEBS Journal

      巻: 282 ページ: 477-490

    • DOI

      10.1111/febs.13152

    • 査読あり
  • [学会発表] タンパク質凝縮体 (Protein Condensate)タンパク質と界面活性剤と水による新規の秩序状態2016

    • 著者名/発表者名
      野島達也、彌田智一
    • 学会等名
      新学術領域研究「ゆらぎと構造」第2回ソフトマター若手勉強会
    • 発表場所
      東京大学検見川セミナーハウス(千葉県)
    • 年月日
      2016-03-10 – 2016-03-11
  • [学会発表] タンパク質より成る液状物質タンパク質凝縮体 (Proetein Condensate) の開発・解析・応用2016

    • 著者名/発表者名
      野島達也、彌田智一
    • 学会等名
      第4回日本生物工学会東日本支部コロキウム
    • 発表場所
      東京工業大学大岡山キャンパス(東京都)
    • 年月日
      2016-03-01
    • 招待講演
  • [学会発表] タンパク質凝縮体:タンパク質と界面活性剤と水による新規の秩序状態2015

    • 著者名/発表者名
      野島達也、彌田智一
    • 学会等名
      「細胞を創る」研究会8.0
    • 発表場所
      大阪大学銀杏会館(大阪府)
    • 年月日
      2015-11-12 – 2015-11-13
  • [学会発表] Protein Condensate: Novel Ordered State of Protein with Surfactant and Water2015

    • 著者名/発表者名
      Tatsuya Nojima and Tomokazu Iyoda
    • 学会等名
      The 16th Ries-Hokudai International Symposium
    • 発表場所
      シャトレーゼガトーキングダムサッポロ(北海道)
    • 年月日
      2015-11-10 – 2015-11-11
    • 国際学会
  • [学会発表] タンパク質と界面活性剤と水の複合化物質「タンパク質凝縮体」の開発2015

    • 著者名/発表者名
      野島達也、彌田智一
    • 学会等名
      第 64 回高分子討論会
    • 発表場所
      東北大学(宮城県)
    • 年月日
      2015-09-16
  • [学会発表] タンパク質凝縮物:タンパク質と界面活性剤と水の複合化による集積ナノ構造材料の開発2015

    • 著者名/発表者名
      野島達也、彌田智一
    • 学会等名
      第 15 回日本蛋白質科学会年会
    • 発表場所
      あわぎんホール(徳島県)
    • 年月日
      2015-06-24
  • [学会発表] タンパク質凝集体 - タンパク質と界面活性剤の液状複合物の水溶液からの自発的相分離2015

    • 著者名/発表者名
      野島達也、彌田智一
    • 学会等名
      第 64 回高分子学会年次大会
    • 発表場所
      札幌コンベンションセンター(北海道)
    • 年月日
      2015-05-28
  • [産業財産権] タンパク質凝縮体ゲルおよびその製造方法2016

    • 発明者名
      野島達也、彌田智一
    • 権利者名
      東京工業大学
    • 産業財産権種類
      特許
    • 産業財産権番号
      2016-060124
    • 出願年月日
      2016-03-24
  • [産業財産権] タンパク質凝縮体膜およびその製造方法2016

    • 発明者名
      野島達也、彌田智一
    • 権利者名
      東京工業大学
    • 産業財産権種類
      特許
    • 産業財産権番号
      2016-060125
    • 出願年月日
      2016-03-24

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公開日: 2017-01-06  

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