研究課題/領域番号 |
26810091
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
山口 卓男 東京大学, 分子細胞生物学研究所, 助教 (80596601)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | タンパク質化学修飾 / 核酸アプタマー / アフィニティーラベル化 / 蛍光ラベル化 |
研究実績の概要 |
1つの細胞には、数万種を超えるタンパク質が存在する。その中で、研究対象のタンパク質だけを選択的に蛍光ラベル化することができれば、そのタンパク質が織りなす様々な細胞内イベントをリアルタイムで観察できるようになる。本研究課題では、対象タンパク質を選択的に蛍光ラベル化できる革新的なプローブ分子の創出を目指している。当初計画において、「対象タンパク質を特異的に認識する核酸アプタマー」と「近接したタンパク質のみを選択的に蛍光ラベル化することのできる反応性標識基」をリンカーでつないだ連結分子をプローブ分子として設計している。本年度は、研究計画に従って、〔1〕がん細胞で過剰発現する肝細胞増殖因子受容体(c-Met)を対象タンパク質とした核酸アプタマーの合成に着手した。また、〔2〕近接したタンパク質を選択的に蛍光ラベル化するのに適した反応性を有する反応性標識基の探索を開始した。その結果、以下の研究成果を得ることができた。 〔1〕対象タンパク質c-Metの認識に適した全長40-merの核酸アプタマー(trCLN3)の合成に成功した。また、trCLN3の5’-末端にアルキン修飾を施すことにより、反応性標識基との連結に適した核酸アプタマーを得ることに成功した。 〔2〕反応性標識基に関して、緩衝液中での安定性・反応性・蛍光性を検討すべく、種々の化合物を設計・合成し、新たにエステル加水分解酵素による機能評価を加え、近接したタンパク質のみを選択的に蛍光ラベル化するのに適した反応性をもつ反応性標識基を見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
反応性標識基の探索が一つの鍵になると考えていたが、緩衝液中で優れた安定性を有し、かつ、近接したタンパク質を選択的に蛍光ラベル化するのに適した反応性を有する反応性標識基を見出すことができた。核酸アプタマーに関しても、対象タンパク質c-Metを蛍光ラベル化するのに十分な量を確保することができた。c-Met蛍光ラベル化に関する検討は遅れているが、反応性標識基の探索結果は当初計画以上のものであり、概ね計画通りに研究が進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
核酸アプタマーtrCLN3と反応性標識基を連結させたプローブ分子を合成し、細胞系で対象タンパク質c-Metの選択的な蛍光ラベル化を試みる。ラベル化の選択性については、細胞溶解物を二次元電気泳動で分離した後、ゲル蛍光イメージャーで評価する。連結リンカーの長さや剛直性、さらには反応性標識基の導入位置について種々検討を行い、c-Met選択的蛍光ラベル化に適したプローブ分子の創出を目指す。c-Metの選択的蛍光ラベル化が達成できたら、c-Met過剰発現細胞(基本的にはがん細胞)とc-Met非発現細胞の細胞識別化について評価を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究開始前に、研究代表者の所属が変わった(大阪大学大学院薬学研究科から東京大学分子細胞生物学研究所へ異動した)ことにより、当初研究計画に挙げていた二次元電気泳動装置購入(約200万円)の必要がなくなった。そのため、当該年度の支出額が減少した。一方で、異動にともない当初計画以上に合成試薬の購入が必要となったため、標記の支出額となった。
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次年度使用額の使用計画 |
今後も合成試薬の購入額が大きくなると予想している。さらに、細胞培養関連でも当初計画以上の支出が予想される(バイオ関連汎用試薬、プラスチック類、蛍光顕微鏡使用費など、計画以上の支出が予想される)。したがって、これら実験関連の費用として使用していくことを計画している。
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