研究実績の概要 |
平成27年度は、新規なN-置換型アミノカルバメート基(aminoxycarbamate:Aoc基)をもつモデルペプチドを新たに調製し、本研究で目指す新規ペプチド合成法に最適なAoc型保護基の模索を行った。この結果、N,N-ジメチルヒドロキシルアミンをもつカルバメート基(dimethylaminoxy carbonyl: Dmaoc基)を見出した。種々検討したところ、Dmaoc基は、中性緩衝溶液中で安定であると同時に、最適な還元剤を加えた緩衝溶液中であれば5分以内に定量的に除去可能であることが分かった。 続いてこの新規保護基をもつアミノ酸誘導体を合成し、水溶液中での縮合反応の検討を行った。合成は市販のアミノ酸-tertブチルエステルを原料として、3ステップで行った。現在までのところ、Tyr, Gly, Phe, Leu誘導体の合成ができている。このうち、側鎖に疎水性官能基であるベンゼン環をもつフェニルアラニンであっても、Dmaoc誘導体 (Nα-Dmaoc-Phe)は水溶液に可溶である事が確認された。このことから側鎖に疎水性の保護基を有するアミノ酸誘導体であっても、Dmaoc誘導体では水溶性が十分確保できるものと期待される。 調製したNα-Dmaoc-Pheを原料に4残基のペプチド(GGFL)のN末端アミノ基に対する脱水縮合反応の検討を行った。縮合剤として、水溶液中で利用可能なEDC・HCl/HOSuを、反応溶媒としてDMFを含む水溶液を用い検討を行った。この結果、10%水/90%DMF溶媒中では、30分以内に定量的な脱水縮合反応が進行する事を見出した。以上よりDmaoc基を利用する事で、ペプチド合成に必要な、アミノ酸の脱水縮合-アミノ基保護基の除去のサイクルを水溶液中で行えることを実証した。本検討の結果、Dmaocを利用した新しいペプチド合成化学を見出すに至った。
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