研究課題/領域番号 |
26810096
|
研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
深谷 幸信 鳥取大学, 工学(系)研究科(研究院), 特命准教授 (00714932)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | イオン液体 / セルロース |
研究実績の概要 |
本研究課題は、セルロースを溶解できるイオン液体/水混合系の構築を目標としている。平成26年度は、セルロースを溶解するために要求される高い水素結合能を発現できるイオン構造を基礎として、水存在下でも高い極性を発現し、セルロース溶解能を示すイオン液体の開発を行った。 セルロースを溶解するイオン液体を作製するためには、高い水素結合受容性を発現できる構成イオンを基礎とした設計が重要である。既に、カルボン酸アニオンやリン酸誘導体アニオンが高い水素結合受容性に寄与することを明らかとしている。しかしながら従来系のイオン液体では、水存在下で水素結合受容性が低下し、セルロース溶解能が著しく低下する。そこで、上記のアニオン構造を基礎として、セルロースとの親和性の向上が期待できるエーテル結合や、アミノ基などの極性基を導入したイオン液体を作製し、極性基の導入がイオン液体の極性値やセルロース溶解能に及ぼす影響を検討した。側鎖に極性基を導入したイオン液体について極性評価を行った結果、既存の極性イオン液体と比較して高い水素結合能を示すことを明らかとした。更に、これらのイオン液体を用いてセルロースの溶解性を評価した結果、いずれもセルロースを溶解できることを明らかとした。 次に、新規に作成したイオン液体に関して、水存在下での各種物性評価及びセルロース溶解能の評価を行った。検討の結果、アミノ基を有するカルボン酸アニオンとエーテル結合を有するホスホニウムカチオンとを組み合わせたイオン液体が含水状態でも高い水素結合能を示し、1水和の状態で5 wt%のセルロースを、2水和の場合でもセルロースを溶解できることを確認し、含水状態でもセルロースを溶解できるイオン液体の作製に成功した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の目標を達成する上で、水和状態においても高い極性、特に水素結合能を保持し、セルロース溶解能を示すための構造要件について明らかにすることが重要な課題である。平成26年度では、各種極性基を構成イオンに導入したイオン液体群を作製し、極性基の構造と極性、セルロース溶解能等の各種物性に及ぼす影響についての基礎知見を集積、整理できた。これらの基礎知見を元に、水添加後に、高い水素結合能を保持し、セルロースを溶解できるイオン液体の基本構造を明らかにできた。
|
今後の研究の推進方策 |
平成26年度に実施した研究において、水存在下においてもセルロース溶解能を示すためのイオン構造を明らかとした。平成27年度は、水添加後に相分離し、セルロース溶解能を示すイオン液体/水混合系の構築を行う。 既にカチオン構造の疎水性部位と極性部位を設計することによって、水との親和性を制御できること、構成イオンの構造によって、水と相分離後のイオン液体層の含水率や極性が異なることを明らかとしている。平成26年度において、水和状態でも高い水素結合受容性を示し、セルロースを溶解すできることを見いだしたアニオン種を基礎として、疎水性の異なるカチオン構造を有するイオン液体を作製する。 作製したイオン液体に水を添加した際の相挙動を観察し、相溶相分離挙動を示したものに関しては、水の添加量と相転移温度の関係を調べる。更に、相分離後のイオン液体層の含水率の変化と温度との関連性について検討を行い、構成イオンの基本構造及び側鎖構造、極性基、疎水基の導入と、相分離挙動との関連性について知見を集積、整理する。以上の検討を通し、高い水素結合受容性を示すアニオンを用いた際に、水と分離し、温度可変によって相溶相分離挙動を制御できるイオン液体を開発する。 新規に作製するイオン液体のセルロース溶解能、リサイクル特性等を評価し、本研究で構築する系を用いたセルロース処理の有用性について評価する。
|