金触媒による高選択的合成を実現するため、これまでのナノ粒子を担持する手法をもとに2 nm、200原子以下のクラスターサイズの金粒子を単分散で担持する方法の開発に取り組んだ。すなわち、従来の金触媒調製法である析出沈殿法の乾燥段階にマイクロ波照射を用いて、迅速に触媒試料を乾燥させることで金前駆体の凝集を防ぎ、金をクラスターサイズに制御できるかを検討した。 マイクロ波乾燥および従来の120 °C 乾燥後の酸化マンガン担持金触媒では、HAADF-STEM で観察できた金粒子の平均直径はいずれも0.5 nm と変わらないが、これらのサンプルを250 °C空気焼成の後TEM 観察を行うと、マイクロ波乾燥サンプルが1.6 nm、120 °C 乾燥サンプルは2.2 nm となり、マイクロ波乾燥の方がより小さな核が、狭いサイズ分布で担持されていることがわかった。XAFS測定によりマイクロ波乾燥と120 °C 乾燥でAu(III)の割合に大きな違いは見られないことから、動径構造関数の強度比から金粒子の大きさを見積もると、マイクロ波乾燥させた方がAu-Au結合距離に対応するピーク強度が小さく、従来乾燥サンプルより小さな金粒子が担持されたと考えられ、TEM観察と同様な結果となった。 得られた酸化マンガン担持金クラスター触媒の特性比較は、液相反応であるメチルフェニルスルフィドを基質とする酸素酸化の他、気相反応としてCO酸化を用いた。どちらの反応においても、今回得られたマイクロ波照射を利用した金クラスター触媒の方が、従来法により調製した金ナノ粒子触媒よりも活性が高いことがわかった。
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