研究実績の概要 |
本研究では、有機-無機配位結合型界面を有するハイブリッド型光電変換システムの構築により、一光子レベルで光をセンシングし電気エネルギーに変換する高感度光センシング技術の確立を目指したものである。成果は大きくわけて二つである。 ①1V以上の高電圧出力を示す新構造の薄膜太陽電池の開発 ②光電流増幅機能を有する光電変換素子の開発 ①として、有機低分子材料と金属酸化物をハイブリッド化した固体素子の開発を行った。例えば、酸化チタン(TiO2)膜とジチオレン錯体を融合した素子において、単セルで1.2Vという世界最高レベルの高電圧出力に成功した。この成膜法を適用し、有機結晶膜とのハイブリッド構造を有するペロブスカイト太陽電池を作製し、高電圧出力を達成した。こうして作製した太陽電池は、光発電層と正孔輸送層がともに結晶性であり、有機無機ハイブリッドのオールクリスタルの接合構造をもつ。光電変換特性において、このセルの電圧出力は1.2V以上まで高まることがわかった。この1.2Vを超える電圧は、ペリレンとペロブスカイト、そして緻密層のTiO2の電子レベルの比較から、論理的に取り出せる最大電圧に近いと考えられる。これは有機無機ペロブスカイトが無機半導体を用いた高効率太陽電池(GaAsなど)に並ぶ高効率の可能性を示唆している(APL. Mater. 2014, ChemPhysChem 2014)。 ②として、最終年度に、ユウロピウム(Eu)と有機分子からなる錯体をTiO2多孔膜の界面に導入した光電変換素子の開発を行なった。本素子では、紫外光領域の光に対し光電変換特性を示し、さらに1000倍以上に電流値が増幅できることが明らかとなった。さらに、太陽光の1/1000以下の光に対してもこの光電流増幅特性は保持される。すなわち、高感度に光をとらえ、電流に変換する素子の開発に成功した。本成果は現在論文投稿中である。
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