研究課題/領域番号 |
26810105
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
福 康二郎 独立行政法人産業技術総合研究所, エネルギー技術研究部門, 研究員 (10711765)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 金属ナノ粒子 / LSPR誘起反応 / 光電極 / 太陽光エネルギー / 高付加価値酸化生成物 |
研究実績の概要 |
本研究は、太陽光を利用した水分解水素製造に関して、“太陽光の有効利用”と“電解電圧の低下”の両立が実現できる光電極システムの設計を目的としている。局在表面プラズモン共鳴(LSPR)の発現が可能な金属ナノ粒子の導入を検討し、LSPR誘起の“負に大きい伝導帯準位を持つ半導体への電子遷移が可能”といった特徴を活用することで、低電圧化を目指す。平成26年度は、Auナノ粒子のLSPRに着目し、1:“LSPR誘起効果の電子伝達剤としての機能が期待できる酸化物半導体の種類”と、2;“電解液の種類”の2点について、その影響を調査した。 1: 各種酸化物半導体層にAuナノ粒子を担持し、疑似太陽光照射下での電流-電圧特性を調査した。検討した酸化物半導体の中では、TiO2を導入したTiO2/Au光電極が、低電圧域において比較的高い光電流特性を示した。この光電極は、TiO2層の高表面積化に由来するTiO2-Au間の接触界面の増加によって更なる高性能化が期待できるため、平成27年度はTiO2層の構造制御にも着目して高性能化を目指す。また、Auナノ粒子上のLSPR誘起反応をサポートするための酸化物半導体または助触媒の導入も同時に行う。 2: LSPR誘起反応をサポートするための酸化物半導体としては、高い水分解能を示すことが知られているWO3またはBiVO4に注目した。まず、これら単独の光電極上で、各種電解液が光電極反応に与える影響について調査した。適切な電解液を選択することで、水素のみならず過硫酸や過酸化水素といった、様々な付加価値の高い酸化生成物を高効率に製造・回収できることを見出した。これらは従来の水から酸素を製造するための電解電圧よりも正に大きい反応であることから、高付加価値な酸化生成物が製造できるだけでなく、“太陽光の有効利用”といった観点からも魅力的である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
従来の水分解酸素製造よりも付加価値の高い酸化生成物を製造・回収でき、“太陽光の有効利用”が可能な光電極システムを設計できた。金属ナノ粒子複合型光電極との融合により、“太陽光の有効利用”と“電解電圧の低下”の両立が実現できる光電極システムの設計が期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
“太陽光の有効利用”と“電解電圧の低下”が実現できる金属ナノ粒子複合型光電極を確立するために、以下の3点について検討を行う。この際、各種キャラクタリゼーション技術を駆使して、反応メカニズム等の解明も同時並行で行う。 1:TiO2の構造制御を行い、TiO2/Au光電極としての光電流特性を高性能化する。 2:LSPR誘起反応をサポートするための酸化物半導体または助触媒を導入し、電解電圧を出来る限り低減しながら高い光電流特性を示す金属ナノ粒子複合型光電極を確立する。 3:当初の計画では予想していなかった、『酸素以外の付加価値の高い酸化生成物が製造でき、“太陽光の有効利用”にも繋がる光電極システム』に関する有意義な成果を見出すことが出来た。そのため、当初の研究計画にわずかな変更が生じたが、上記の成果も組み込むことで、さらに汎用性の高い金属ナノ粒子複合型光電極システムの設計を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
予期しえなかった重要な成果が得られ、当初の研究計画にわずかな変更が生じたため、当初の見込み額と執行額が異なった。しかしながら、新たに得られた成果を当初の計画に組み込むため、平成27年度は、前年度の研究費を含めて当初の予定通り計画を進めていく。
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次年度使用額の使用計画 |
消耗品(光電極合成・反応用試薬、反応セル、雰囲気ガス等):1300千円、海外旅費:450千円、国内旅費:150千円、その他(学会参加費、論文投費等):250千円
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