太陽光を利用した水分解水素製造に関して、“太陽光の有効利用”と“電解電圧の大幅な低下”の両立が実現できる光電極システムの設計を目的としている。平成26年度には、適切な電解液を選択することで、水素のみならず様々な高付加価値酸化生成物を製造できることを見出した。平成27年度は、特に高い汎用性を有する過酸化水素の酸化的製造にも着目し、原料として水のみを使用した水素と過酸化水素の同時製造・蓄積が可能な光電極システムの設計について検討した。 高い光電流特性を示すことが知られているBiVO4系光電極を用いて、擬似太陽光照射下での、各種電解液中における水分解反応を調査した。炭酸水素塩を電解液に使用した場合のみ、理論電解電圧(+1.77 V vs. RHE)よりも著しく低い電圧(> +0.4 V vs. RHE)下でさえも、光アノード上での過酸化水素の生成が確認された。カソード上では水素の生成も確認され、水素および過酸化水素の同時製造・蓄積が実現できた。炭酸水素塩の濃度を増加するに従い、光アノード上での過酸化水素生成の選択率および蓄積量は大幅に向上し、本系における特異的な過酸化水素生成には炭酸水素塩の存在が大きく寄与することが明らかとなった。炭酸水素塩が光アノード上で酸化されることで生成し得る過炭酸塩種が、水から過酸化水素を合成するための効果的な触媒として機能していることが示唆される。 本システムは、従来の水から水素と酸素を製造するための電解電圧(+1.23 V vs. RHE)よりも正に大きい反応であることから、“太陽光の有効利用”の観点からも有利であり、電圧を印加した場合の太陽光エネルギー変換効率は原理的に高くなる。実際、2.2%と非常に高い値が達成された。
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