研究課題/領域番号 |
26810111
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
山本 俊介 東北大学, 多元物質科学研究所, 助教 (70707257)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | π共役系分子 / 二次元集積 / 超薄膜 / Langmuir-Blodgett法 |
研究実績の概要 |
本年度は二次元集積化可能なπ共役系ユニットを側鎖に有する両親媒性高分子のLangmuir-Blodgett法による精密集積化を検討した。昨年度までに合成したカルバゾール(Cz)含有高分子pCzAAおよび両親媒性高分子pDDAを気水界面に展開し、表面圧-面積曲線測定からパッキングを議論した。その結果、pDDA、pCzAAを順に水面上に展開する共展開法を用い、なおかつ分子量分布の狭いpDDAを用いることで、わずか10mol%のpDDA添加によって極めて安定な単分子膜が得られることが明らかになった。さらに累積膜のX線反射率測定から累積膜はいずれも層状構造を保持していることが分かり、高密度な水面上単分子膜が基板上へ累積されたことが明らかになった。以上のことから、90mol%という高い集積密度でπ共役系ユニットの集積に成功したことが示され、この値は過去に実現されたCz含有共重合体での集積密度(30mol%)を大きく上回っている。 一方、pDDA、pCzAAを混合して展開する混合溶液展開法では集積密度が60mol%を越えると単分子膜の安定性が低下することが分かった。この原因を調査するため、共展開法および混合溶液展開法を用いて作製した試料を原子間力顕微鏡(AFM)で観察した。その結果、共展開法を用いた試料ではマイクロメートルオーダーでの相分離構造が見られ、pDDAドメインが膜内に島状に点在する構造を取ることが分かった。一方で混合溶液展開法を用いた試料には明確な相分離が観察されず、両者は比較的均一に混合していることが分かった。以上のことから、Cz含有高分子pCzAAは少量のpDDAと共展開し、適切な二次元相分離形態を発現させることでLB法による単分子膜集積が可能でありπ共役系ユニットを高密度に含む高秩序薄膜の作製に成功したことが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画において本年度は水面上単分子膜挙動の解析に取り組む予定であった。結果として上記の通り側鎖型π共役系高分子を90mol%という高い集積密度で二次元集積化することに成功し、当初目標を達成することができた。さらに当初計画では合成化学的な手法を用いて高密度化を実現する手法探索を検討していたが、本年度は①単分散高分子の利用および②共展開手法の利用を用いた相分離形態の制御という、高分子材料科学的な手法を用いることで課題解決が可能となった。このことはより簡便に、なおかつ高分子科学の立場から新規な高機能材料を設計できることを意味しており、当該学術分野への寄与は大きいと考えている。さらに、当初は平成28年度に行う予定としていた固体基板累積膜の構造・物性解析についても予備的検討を行うことができた。このことは当初計画を上回る成果であり、おおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究推進について、上記の通り順調な進展を見ているカルバゾール基含有両親媒性高分子のpDDAとの共展開法による集積体について固体基板累積膜の構造・物性解析を行い、本研究課題の目標である「高密度・高秩序な二次元π共役系集積体の構築」の確実な実現を期する。具体的には構造解析のためSPring-8 を利用したGI-SAXS 測定(2016年A期ビームタイム確保済み)を行い、集積体内部でのπ共役系ユニットの構造について議論を行う。また、機能性としては時間分解発光測定および電界効果トランジスタ素子の作製を通して、光・電気機能性について明らかにすることで、作製した二次元集積体が有する特性について議論を行い、最終的な総括を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究の進行状況により、合成用試薬の購入量が当初予定よりも少なくなったため。
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次年度使用額の使用計画 |
大型放射光施設での測定にかかる旅費分として使用する予定。
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