研究課題/領域番号 |
26810114
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
辻本 敬 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (90425041)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 高分子多孔体 / 複合材料 / 再生可能資源 / セルロース |
研究実績の概要 |
本研究では高分子溶液の相分離により三次元網目構造を有する多孔体を作製し、バイオマスプラスチックの補強材として用いることで力学物性や機能性に優れたバイオベース複合材料を開発することを目的としている。 今年度はセルロースをチオシアン酸カルシウム飽和水溶液に加熱・溶解させた後、低温でセルロースを析出・結晶化させ、貫通孔を有するセルロース多孔体を得た。その後、菌産生ポリエステルであるポリヒドロキシアルカン酸をセルロース多孔体に含浸し、オールバイオマス複合材料を作製した。得られた複合材料はポリヒドロキシアルカン酸単独物と比較して初期弾性率や最大応力が向上するだけではなく、破断ひずみも大きくなることがわかった。また、セルロース多孔体を補強材として用いることで寸法安定性も向上した。 更にジメチルスルホキシド(DMSO)に対するポリヒドロキシブチレート(PHB)の溶解度の温度依存性を利用し、相分離法によるPHB多孔体の作製手法を開発した。DMSO中のPHB濃度により、得られる多孔体の微細構造の制御が可能であることがわかった。また、PHB多孔体にエポキシ化大豆油(ESO)を含浸して加熱したところ、PHBの多孔構造を保持したままESOの架橋反応が進行し、透明なPHB/ESO複合材料が得られた。PHB/ESO複合材料の力学物性はPHB多孔体の微細構造に依存することが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、セルロース多孔体を利用してヒドロキシアルカン酸との複合材料を開発した。また、セルロース以外のバイオベースポリマーの多孔体の開発にも着手しており、概ね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
高分子多孔体を補強材として利用したバイオベース複合材料を開発し、得られた複合材料の性能や機能を調べる。具体的には力学物性に関しては粘弾性測定、圧縮試験、多孔体のナノ構造の確認に関してはSEM観察、表面積測定(BET測定)を行う。また、TMAを用いて熱膨張率を測定し、寸法安定性の確認を行う。複合材料の高性能化、特に靱性の向上には多孔体の強度や微細構造だけではなく、多孔体とマトリックス樹脂界面における良好な接着が重要と考えられる。そこで多孔体表面の化学修飾を行う。未修飾多孔体を用いて合成した複合材料と物性を比較することで靱性向上の要因を特定する。更に多孔体の微細構造と複合材料の物性の相関を詳細に調べ、材料設計にフィードバックすることで複合材料の高性能・高機能化を図る。 新たなバイオベースポリマーを用いて相分離法による多孔体作製技術の確立、及び複合材料の開発も引き続き行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究を進めていく上で、必要に応じて既存の装置や企業に提供して頂いた試薬を使用したため当初の見込み額と執行額は異なった。しかし、研究は予定通り進展しており、今後も当初予定通りの計画を進めていく。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は初年度購入予定だった恒温槽、油回転真空ポンプを購入する。 消耗品費としてはバイオベース複合材料を作製するためのポリマー類、有機試薬類、溶媒、機能評価用の消耗品をはじめとする試薬・溶媒を中心に、サンプル合成や評価に使用する器具類を含む。他に研究調査、成果発表のための旅費を計上している。
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