本研究はグラファイトシリカによるTiO2の水素製造増大メカニズムの解明及び人口的ナノサイズのグラファイトシリカの合成を目的とした。以前の理論ではGSの粘土成分が水素製造増大の原因と考えたが、通常の天然粘土であるドロマイト、セリサイト及び固相反応法を使って人口的に合成したセリサイトのナノ粒子を用いて水素製造実験を行ったところ水素発生増大への貢献が見られなかった。この結果から粘土成分はGSに含まれた状態のみ水素増大に貢献すると分かった。また、以前の提案ではpH変化によってTiO2の表面が陽電荷を持つことで表面が陰電荷 のGSとの凝集がしやすくなると考え、同じバンドギャップのZnO(ZPC=8.7)を用いてpHを9.5に調整し、実験を行ったが水素製造増大が見られなかった。この結果から水素製造増大へのpHの影響を考え直すべきことが分かった。また、可視光応答型光触媒であるZnIn2S4、ドープ型BiFeO3等のナノコンポジットを合成し、同様な実験を行った場合も水素製造増大が見られなかったため、pHやバンドギャップ以外の特性をもとにしてさらに研究する必要がある。水素製造増大が見られなかった理由として、TiO2にしか見られない超親水性のことが考えられる。現在はTiO2の超親水性とGSの成分との相互作用について取り組んでいる。また、今回の研究では超音波照射を利用し、世界で初めて超微粒子ナノコンポジット合成の新しい方法を開発した。合成したナノ粒子は単結晶で平均サイズが11nmであり、酸素欠陥が少ないことが分かった。さらに不純物相を存在する金属酸化物のナノ材料へ超音波照射することにより不純物相の削除あるいは減少できることが分かった。この方法は結晶成長及び光触媒合成に大きく貢献すると期待できる。
|