研究実績の概要 |
本研究では,層状ケイ酸塩と球状粒子との複合化によって発現する独自の機能について明確にすることを目的とする。特に期待する機能および用途は,コロイド結晶のビルディングユニットや光学分割用HPLCカラム充填剤,吸着性に優れた廃液処理用分離フィルターである。そのため,種々のサイズあるいは形状のシリカ表面に,層状ケイ酸塩の微結晶を強固に固定化し得られた複合粒子の機能について調査した。 単分散球状シリカ(0.2, 0.6, 1.0, 3, 5 μm)および繊維状シリカ(繊維径は数 μm)を原料として用いた。これらのシリカを層状ケイ酸塩の原料(Li塩やMg塩等)と水溶液中で混合し,水熱反応条件にて2-3日保持した。その結果,原料のシリカのサイズ乃至は形状に関係なく,シリカ表面から層状ケイ酸塩微結晶が水熱反応条件で不均一核生成反応により成長することがわかった。また出発物質に添加するLi, Mg塩の添加量を変えることで,シリカ表面を被覆する層状ケイ酸塩の量(または厚み)も変化した。いずれも原料のシリカの形状を損なうことなく複合化することができた。成型体(直径数センチ,厚さ数ミリメートルのフィルター)の繊維状シリカにおいても,成型体を維持したまま複合化が実現できた。シリカ表面上の層状ケイ酸塩のインターカレーション化学は,平衡論的には均一核生成で得たものと大きな違いはなく,溶液中でイオン交換反応を実施しても,表面の層状ケイ酸塩はほとんど剥落しないこともわかった。 光学分割用HPLCカラム充填剤として応用した場合,ある種のエナンチオマーを分離するのに要する時間が,層状ケイ酸塩のみで構成された従来の充填剤と比べ著しく短縮された。これは,シリカを被覆する層状ケイ酸塩が薄く,ラセミ混合物の接触時間を短くできたためと考えている。
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