バイメタリックナノ微粒子(BNP)は表面積が大きいことに加え,異種金属間相互作用,サイズ効果等により特異的な物性を示すことから,機能性材料として排ガス浄化触媒,燃料電池用電極触媒,量子ドット,ナノ磁石等の広範な用途への応用が期待されている.より高性能な材料を開発するためには,性能とBNPの幾何構造,電子構造との関係を見出すことが肝要である.本研究では原子レベルの局所構造,電子構造がわかるX線吸収分光法(XAS)に着目し,材料・デバイスが作動している条件で同分析を行うことで,上述の関係を見出すことを最終目標としている. 2015年度は本研究内で2014年度に開発した3次元原子配置評価法を自動車排ガス浄化触媒の実作動条件分析に適用し,PdコアPtシェル(Pd@Pt)微粒子の原子配置の温度依存性を把握するとともに同微粒子の触媒性能と原子配置との関係を調べた.プロペン-酸素化学量論組成(窒素バランス)の気流中,150-600℃の温度域でPd@Pt微粒子の原子配置を調べた所,400℃までPd@Ptの原子配置を維持することがわかった.500℃から原子配置の変化が現れ始め,600℃で原子混合が加速されPd-Pt合金状態となった.同雰囲気においてPd@Ptコアシェル微粒子としての触媒性能を引き出したい場合,500℃未満の温度域でPd@Pt微粒子を使用する必要があることがわかった.これを踏まえ,Pd@PtとPd-Pt合金のプロペン酸化触媒能を比較した.その結果,300℃以下の低温においてPd@Ptの方がPd-Pt合金よりも高活性であることがわかった.
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