酸化物のみで構成された薄膜電極をパルスレーザー堆積法(PLD法)により作製し、その酸素電極反応について電気化学的に検討を行った。当初の計画通り、PLDを行う条件設定およびターゲット材料の作製に時間を要したが、チャンバー雰囲気の酸素圧力およびターゲット-基板距離、またターゲットの組成を最適化することにより、目的とするペロブスカイト型酸化物薄膜を作製することに成功した。得られた酸化物薄膜は100 nm程度の膜厚を有しており、鉄シアン錯体をプローブとした電気化学的活性評価では、良好な電子伝導性を有しており、酸素還元および酸素発生に必要な電子伝導性が確保されたことが分かった。続いて、作製した酸化物薄膜電極を対流ボルタンメトリーに適応するために、回転電極に実装して測定を行った。その結果、十分な酸素還元活性は得られず、これまでに合剤電極で得られた電流値と比較して、極めて活性が低いことが分かった。これは、実際の電極中での酸素還元反応がカーボンとペロブスカイト型酸化物の協奏的な触媒作用を示しており、高活性な酸素電極触媒を構築する上での重要な知見を得ることができた。また、酸素発生に関しては薄膜電極上でも反応が十分な速度で進行し、既往の研究報告とも活性序列が一致した。以上のことから、酸素電極において放電反応と充電反応である酸素還元と酸素発生反応は反応経路が異なる可能性が強いことが分かった。
|