研究課題/領域番号 |
26810130
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研究機関 | 工学院大学 |
研究代表者 |
永井 裕己 工学院大学, 工学部, 研究員 (20559942)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 薄膜トランジスタ / 分子プレカーサー法 / シリコン基板 / 酸化銅 / 銅 |
研究実績の概要 |
昨年度の目標は,分子プレカーサー法を用いてp型酸化物TFTの作製を試みることである。効果的に研究を進める上で,既製品や報告例のある材料を用い,半導体層のみCu2O薄膜を形成した。分子プレカーサー法で形成したp型Cu2O薄膜が薄膜トランジスタとして動作するかを確認する目的で,シリコン酸化膜付シリコン基板上に形成した。ドレインとソースは,金を蒸着して測定した。しかし,Cu2O単一相をこの基板上で形成することは,困難だった。ガラス基板上には,安易に形成できるが,Cu2O薄膜形成は,基板の影響があることがわかった。そこで,Cuを含むCu2O膜やCuOを含むCu2O膜など,熱処理時間変化による特性変化を調べた。金属銅を含むCu2O膜は,トランジスタとして動作しなかったが,CuOを含むCu2Oは,トランジスタとして動作が確認できた。しかし,線形領域の立ち上がりや飽和領域の傾きが鈍く,Cu2O単一相薄膜の形成が必須である。現段階では,分子プレカーサー溶液を設計し,Cu2O単一相膜の形成条件を確立した。このトランジスタ特性は,測定段階であり,本年度の大きな目標である。 以上のことから,Cu2Oの作成条件を探索するとともに,Cuを含むCu2O膜の形成を応用して銅薄膜の形成を試みた。これは,膜内部の有機物をコントロールすることで容易に形成することができ,これらに関して学会や論文として発表した。今後は,この銅薄膜をソース,ドレインに使用する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
CuOを含むが酸化膜付きシリコン基板上にCu2O薄膜を形成し,その薄膜がp型TFT特性を示したことは,重要である。これまでにp型Cu2O薄膜を化学的湿式法で形成したことが無く,溶液法で形成したCu2Oが特性を示した点は,評価できる。しかし,その特性は,未だ不十分で改善が必要である。また,先に来年度の目標だった金属薄膜の形成を達成し,それを論文化した点は,評価できると考える。
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今後の研究の推進方策 |
今後は,Cu2O薄膜単一相の結果を参考に,配位子とCu2O薄膜のホール効果測定,TFT特性の相関を調べる。具体的には,プレカーサー溶液中に含まれる錯体を設計し,その溶液で形成した膜のホール移動度の相関を先に調べる。そして,ホール移動度を制御した膜を利用して,TFT特性の変化を調べる。また,透明導電膜上に絶縁膜を形成し,その上にCu2O薄膜を形成する透明TFTの形成も試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
論文校正で使用予定していたが,論文執筆が遅くなり差額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
本年度は,論文校正に使用する予定である。
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