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2014 年度 実施状況報告書

Coレドックスを用いた高効率色素増感太陽電池のための多核錯体の精密設計と特性制御

研究課題

研究課題/領域番号 26810133
研究機関独立行政法人産業技術総合研究所

研究代表者

舩木 敬  独立行政法人産業技術総合研究所, エネルギー技術研究部門, 主任研究員 (80450659)

研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2017-03-31
キーワード太陽電池 / 色素増感太陽電池 / ルテニウム錯体色素 / コバルトレドックス / 多核錯体
研究実績の概要

次世代型太陽電池の実現を目指し、高い開放電圧が得られるコバルト(Co)レドックスと可視光だけでなく近赤外光も利用できるルテニウム(Ru)錯体色素を用いた高性能色素増感太陽電池を開発している。この電池システムでは、Coレドックス→Ru錯体色素の再生過程が遅い、またCoレドックスへの逆電子移動が速いことなどが原因で充分な性能が得られていない。そこで、色素の再生過程の改善と逆電子移動の抑制を図るべく、Ru錯体色素にドナー錯体を連結した多核錯体を設計・合成し、新概念の色素増感太陽電池の創製を検討している。
本研究の多核錯体は、Ru錯体色素・スペーサー・ドナー錯体から構成されているので多核錯体の基本となる合成経路の開発を試みた。まずは剛直でπ共役系を拡げられるエチニル基を導入したスペーサーを2種合成できたので、これらのスペーサーを持つ多核錯体の合成を行った。結果、Co錯体を得ることは出来たがRu錯体化の際にCo錯体がこわれてしまい、目的の多核錯体を得ることが出来なかった。そこで、合成方法を変更し、酸化チタン電極への結合基に用いるカルボキシ基をエステル化したRu錯体にスペーサーの導入を試みた結果、目的のRu錯体を得ることができた。今後Co錯体化を行い目的の多核錯体が得られれば、電池特性を評価する予定である。
また、色素の再生過程に生ずる電子移動では電子の移動距離や錯体同士の結合様式が大きな影響を与えるため、効率の良い電子移動を起こすためのスペーサーの探索が必要である。そこで、上述の多核錯体の合成と並行してビピリミジンなどをスペーサーに持つ多核錯体の合成も試みている。さらに、多核錯体とCoレドックスに適した電池作成条件を見出すために、多核錯体のRu錯体部分と類似の構造を持つRu錯体を合成し、これらのRu錯体とCoレドックスを組み込んだ太陽電池を作製して性能を評価した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

目的の多核錯体は現在合成中であるが、エチニル基を導入したスペーサーを持つ多核錯体ではCo錯体化がうまく進んで多核錯体が得られれば、基本となる合成経路を確立することができる。また、これと並行してビピリミジンなどをスペーサーに持つ多核錯体の合成も検討している。もし、基本の合成経路を確立できれば、効率の良い電子移動のためのスペーサーの構造最適化に速やかに取り組むことが出来る。さらに、同じ合成経路を用いて逆電子移動を抑制するための疎水性部分の導入も検討することが出来るので、今後の進捗が充分に期待できると考えている。

今後の研究の推進方策

平成27年度は、昨年度に引き続き、色素の再生過程で効率良く速やかに電子移動が起こるための多核錯体の合成と構造最適化を試みる。色素再生過程において、ドナー錯体から光励起により生じた酸化状態のRu錯体色素への電子移動には、電子の移動距離や錯体同士の結合様式等が大きな影響を与えるため、構造と電子移動の相関を明らかにすることが重要である。また、電池特性を低下させる要因の一つである逆電子移動を抑制するため、疎水性部分の導入を検討する。疎水性部分の導入によるブロッキング効果は置換基の種類・鎖長・導入位置などによって、効果が大きく異なると考えられる。そこで、まずは長鎖アルキル基を導入し、その効果を評価する。さらに、Ru錯体色素・Coドナー錯体・Coレドックス、それぞれの配位子に置換基を導入し、エネルギー準位の制御を行い、電位差の最小化を試みる。

次年度使用額が生じた理由

外国で行われる国際学会にて研究動向を調査し、最先端の知見を得る予定であったが、11月に京都で開催された第6回太陽光発電世界会議 (6th World Conference on Photovoltaic Energy Conversion (WCPEC-6))に参加したので、外国旅費として計上していた分を物品費等で使用することにしたため。

次年度使用額の使用計画

消耗品では、スペーサーなどの配位子や金属錯体の合成に必要な試薬類とガラス器具、増感色素の精製に必要なカラム充填剤(SEPHADEX LH-20)を購入する。また、電池性能を評価する際に用いるコバルトレドックスの合成に必要な試薬類や白金対極なども購入する予定である。さらに、国内、及び国際学会に参加し、研究成果を発表するとともに、研究動向を調査して太陽電池や増感色素の分子設計に関する情報など、本研究進めるために有益な最先端の知見を得る予定である。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2015 2014

すべて 学会発表 (3件)

  • [学会発表] シクロメタル化ルテニウム錯体色素とコバルト電解質を用いた色素増感太陽電池2015

    • 著者名/発表者名
      舩木敬、佐山和弘
    • 学会等名
      日本化学会第95回春季年会
    • 発表場所
      日本大学(千葉県)
    • 年月日
      2015-03-26 – 2015-03-26
  • [学会発表] フェニルピリジンカルボキシラト誘導体を有するシクロメタル化ルテニウム錯体色素を用いた色素増感太陽電池2014

    • 著者名/発表者名
      舩木敬、大塚裕美、小野澤伸子、春日和行、杉原秀樹、佐山和弘
    • 学会等名
      2014年電気化学会秋季大会
    • 発表場所
      北海道大学(北海道)
    • 年月日
      2014-09-27 – 2014-09-27
  • [学会発表] フェニルピリジンカルボキシラト誘導体を有するルテニウム錯体色素の合成と色素増感太陽電池への応用2014

    • 著者名/発表者名
      舩木敬、大塚裕美、小野澤伸子、春日和行、杉原秀樹、佐山和弘
    • 学会等名
      第26回配位化合物の光化学討論会
    • 発表場所
      首都大学東京(東京都)
    • 年月日
      2014-08-06 – 2014-08-06

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公開日: 2016-06-01  

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