本研究は、カーボンナノチューブ(CNT)分散ポリマー接着層を有する繊維強化複合材料の一貫セルフモニタリング機能を理論・実験両面から解明し、信頼性・耐久性向上を図るものである。得られた主な成果を要約すると以下の通りである。 1. 炭素繊維強化プラスチック(CFRP)積層材料を多層CNT(MWNT)分散エポキシ樹脂により接着した双片持ちはり(DCB)試験片を作製し、モードI疲労試験(変位制御)・その場き裂観察・電気抵抗測定(上下CFRP表面に電極を作製し、DCB試験片厚さ方向の電気抵抗を測定)を行って、電気抵抗と疲労き裂挙動との関係や疲労特性(き裂進展開始繰返し数とエネルギー解放率との関係)に及ぼすCNT添加の影響を明らかにした。疲労試験中の最大荷重は、繰返し数の増大に伴い低下した。また、DCB試験片の電気抵抗は、繰返し数の増大に伴い増大した。さらに、疲労特性に及ぼすCNT添加の影響は小さいことを確認した。 2. き裂進展による電気伝導ネットワーク遮断メカニズムをモデル化した電気抵抗変化予測手法を応用し、疲労試験におけるDCB試験片の電気抵抗変化を予測した。電気抵抗変化の予測結果は、実験結果と概ね一致し、本手法の妥当性を確認した。 3. 理論的・実験的結果より、疲労試験中の電気抵抗変化は疲労き裂進展やき裂先端近傍における疲労損傷に起因していると考えられ、電気抵抗変化による疲労き裂・損傷モニタリングの可能性を見出した。
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