研究課題/領域番号 |
26820011
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
長田 稔子 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (90452812)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 金属粉末射出成形 / バインダ / 脱脂 / 粒径 |
研究実績の概要 |
金属粉末射出成形法(MIM)のマイクロ化における非常に大きな問題は,バインダ量の増加である.粉末粒径が小さくなると,比表面積が増大し,粉末間の摩擦を抑えて,射出成形時の流動を容易にする必要が生じるため,多量のバインダが必要となる.一方バインダは焼結前に除去する必要があり,溶媒脱脂や加熱脱脂が行われるが,この脱脂プロセスは最終製品の変形や欠陥に直結する射出成形プロセスの核心部である.本研究ではμ-MIMの品質向上を狙い,まず脱脂メカニズムを解明する.さらに従来材料を根本から見直した全く新しいバインダシステムを提案し,新たな実験評価法の確立と共に実プロセスにおいて効果を実証していく. まず,溶媒脱脂としてこれまで利用していたヘプタン気相中での脱脂について詳細に検討を行った.ヘプタン量,昇温時間,保持時間,さらに,成形体を覆うアルミナ量や,アルミナへの負荷荷重を変化させた場合の脱脂率を調査した. また,粒度が整ったアルミナ砥粒で,平均粒径が異なるものを用い,成形,脱脂を行った.一般に用いるMIM用粉末は球形であるが,砥粒は異形状であることや,アルミナで硬度が高いことから,成形はMIMと同様には行えなかった.しかし,バインダを一定量として混練を行ったところ,脱脂率は粒径の小さいほうが低くなり,これはステンレスやチタンなどの一般的なMIM材と同様の傾向であったことから,粒度の影響を定量評価するなどさらなる検討を行う予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
粒度が整っていて,かつ粒度が異なる粉末を入手し,脱脂メカニズムの検討を行った.脱脂時のその場観察により,変形挙動を確認している.
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今後の研究の推進方策 |
まず,成形・評価が容易となるような小型の試験片金型を新規作製し,既存の超小型射出成形機によって作製する予定である.成形中の温度や圧力をモニタリングし,成形体のばらつきを低減して均質度を増し,その後の脱脂が安定して行われるようにする.その中で,成形体の均質度の評価手法を確立する. さらに,新しい脱脂システムの効果を実証確認する.マイクロ構造体を作製して新たなバインダシステムと脱脂方法について検討し,得られる焼結体の寸法精度や変形挙動,力学的特性の評価を行う.まず,脱脂時間短縮に有効であると考えられる,二酸化炭素の超臨界流体を用いた脱脂について検討を行う.流体中でのサンプルの衝突による損傷なども起こりうることから,温度や時間,圧力などに加え,サンプル処理数など,様々な脱脂条件の最適化を図る必要がある.また,紫外線を利用した脱脂方法についても検討する.脱脂初期に積極的に表面の樹脂を分解・除去する方法は,脱脂時の損傷予防のために有効であると考えられる.それぞれに適したバインダ成分や配合比について検討を行う.なお,これらの新たな脱脂システムは,MIM の大型部品製造でのネックであった脱脂時間の短縮,脱脂時の変形・損傷予防にも効果的であると考えられ,応用の一つとして有効である.これらの検討の結果,さらなる小型化を狙い,提案したバインダシステムをナノ粉末に対し適用することも試みる.これにより高機能性を有する新たなμ-MIM の応用展開を提案したい.
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次年度使用額が生じた理由 |
射出成形用金型およびそのセンサ一式を購入予定であったが,試験片形状の選定に時間を費やし,納期の関係で購入が間に合わなかった.次年度に購入予定である.
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次年度使用額の使用計画 |
新しい脱脂システムの検討のために,紫外線照射装置,超臨界脱脂容器を購入予定である.また消耗品として,金属粉末およびバインダ樹脂,焼結用ガスの費用を考えている.成果報告として学会への参加,論文投稿を予定している.
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