研究課題/領域番号 |
26820013
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
坂井 建宣 埼玉大学, 研究企画推進室, 准教授 (10516222)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 粘弾性 / 長期クリープ / 時間-温度換算則 |
研究実績の概要 |
本研究では,高分子材料の時間-温度換算則に基づく長期クリープ挙動予測の精度評価のために, これまで誰も達成していない15年間連続クリープ試験の実施を目標に,地震・停電対策を施した長期クリープ試験装置を開発し,申請期間中の最低2年間のクリープ試験を行うことを目的としている.これまでのところ,以下の2点に関する結果を得た. 1. 完成した試験装置は,定ひずみ速度試験,定負荷速度試験,クリープ試験,応力緩和試験が可能となっており,それぞれの試験方法において,ポリプロピレンの粘弾性特性の測定を行っている.その結果,すべての結果が,ほぼ等しい粘弾性特性を示していることからも,試験装置の制度の高さが証明されている.しかし,応力緩和試験および,定ひずみ速度試験結果は,アレニウス型時間-温度換算則,クリープ試験および定負荷速度試験においては,W.L.F.型時間-温度換算則が適用され,違いがみられた.これについては,緩和弾性率からクリープコンプライアンスを算出する方法において,近似を用いたためであると考えているが,今後より詳細な検討を行う必要がある. 2. 試験機の地震・停電対策については,試験装置全体を人為的に揺らすことで疑似的に自信を発生させ,揺れが発生している間はシリンダーを固定する制御を行い,クリープ試験への影響を最小限に抑えることができた.また,停電対策については,購入した無停電電源装置の一つが故障しており,その対応に追われているが,大学停電時の非常電源への接続のための抜き差しにおいても問題なく,また実際に10時間程度の停電に耐えることができたため,停電対策としては十分であると考えている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
試験装置を制御するとき,荷重の値を一定期間の平均値を目標として制御を行っているため,変位制御時に若干の振動が入ってしまう.短時間のクリープ試験では影響がほとんどなく,1か月以上行ったクリープ試験においても,さほど影響がみられなかったが,今後2年間以上の試験を行うにあたり,電動シリンダーへの負荷が高く,長期試験に耐えられない可能性がある.そのため,荷重制御方式を変更し,フィルターを導入するなどのプログラム的な変更を行っている.そのため,長期試験実施が遅れている.また,試験装置の予備を作製し,並列して実験を行えるようにしているが,恒温槽の導入が遅れていることもあり,前期の間に完成する予定となった.しかし,今年度行う予定であった様々な種類の粘弾性測定方法の比較は昨年度行っており,良い結果を得ていることから,研究としての遅れは若干であると判断している.
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今後の研究の推進方策 |
長期クリープ試験を実施し,長期クリープ挙動評価を行うため,今年度は以下の2点について研究を行う予定である. 1. 異なる試験方法による粘弾性特性評価:昨年度,動的粘弾性測定装置を導入したため,動的粘弾性測定結果から粘弾性パラメータを算出し,長期クリープ試験結果と比較を行う.特に,過重負荷方式を曲げのみでなく,引張式においても試験を実施し,曲げクリープ試験結果との比較を行う.また,引張型動的粘弾性試験結果から曲げクリープ挙動を算出するための校正方程式も検討する. 2. 長期クリープ試験:長期クリープ試験を確実に実施するためには,スムーズな変位制御が必要不可欠である.そこで,試験機制御プログラムのフィードバック回路を見直し,フィルターの導入など,改良を加える,また,今年度中ごろから長期クリープ試験を開始し,可能な限り長期な試験を行う.
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