ポリプロピレン材を対象とした長期クリープ試験を昨年度に引き続き行った.最終的には1年以上のクリープ試験結果を得た.得られたクリープ試験結果は安定しており,大学における瞬間停電,全額停電,また地震の影響を受けていないことが確認された.また様々な温度における短時間クリープ試験,等ひずみ速度試験および等負荷速度試験からクリープコンプライアンスを算出し,時間-温度換算則を適用することによりマスター曲線を作成し,長期クリープ試験結果と比較した.短期クリープ試験結果は長期クリープ試験と良い一致を示し,ポリプロピレン材はW.L.F式による時間-温度換算則が最も適していることが明らかとなった.また等ひずみ速度試験,等負荷速度試験結果は,予測したクリープ挙動の一部のみが長期クリープ試験結果と一致したが,それ以外では一致しなかった,特に長時間側のデータの乖離が大きく,この原因として等ひずみ速度試験,等負荷速度試験では非線形粘弾性挙動(応力依存性)が発現していたことが明らかとなった.非線形性および線形粘弾性理論適用範囲策定のため,応力依存性の発現しない線形性確認を行うための試験を開発・実施した.これよりポリプロピレン材においては室温では約1MPa程度の小さな応力から非線形性を発現していることが明らかとなった.さらにはこの線形粘弾性理論適用範囲は,温度が高いほど限界値が低く,90℃以上においては0.4MPa程度と,室温の半分以下であることが明らかとなった.以上より.長期クリープ試験および様々な方法における粘弾性挙動予測を行うことによって,非線形性を考慮した粘弾性挙動予測が必要不可欠であることを明らかにしたとともに,線形粘弾性理論適用範囲の調査の重要性を明らかにした.
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