研究課題/領域番号 |
26820015
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研究機関 | 沼津工業高等専門学校 |
研究代表者 |
松田 伸也 沼津工業高等専門学校, 機械工学科, 准教授 (10550460)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 製造欠陥 / 応力拡大係数 / 仮想等価き裂長さ / FEM解析 / 1本のき裂発生 / き裂の分岐 / 温度差のばらつき |
研究実績の概要 |
球径15/32inchの窒化ケイ素セラミック軸受球(以下,セラミック球)に対する水中急冷熱衝撃の追実験を実施することで巨視的割れを伴う熱衝撃破壊する温度差や破面観察による破壊形態のデータベースをさらに追加した.構築したデータベースを基に熱衝撃破壊発生温度差とその統計的性質についてワイブル分布と有限要素法(FEM)解析の適用および応力拡大係数と仮想等価き裂長さを組み合わせた破壊クライテリオンの導入によって力学的な観点から検討した.以下に明らかにした事柄を示す. ①FEM解析から得られた熱衝撃破壊発生温度差における熱応力と等価き裂長さとの関係は,窒化ケイ素セラミックスの4点曲げ試験から得たデータとともに破壊クライテリオンを適用することによって統一的に評価することができた.すなわちこのことは,セラミック球の熱衝撃による破壊起点は曲げ破壊と同様に極表面に存在する製造欠陥(介在物)であることを示している.ゆえにセラミック球の熱衝撃破壊は,極表面層に存在する製造欠陥周りに引張熱応力が作用して臨界値に到達したとき,1本のき裂が発生することによって起こる.その直後,球形に依存した軸対称の引張熱応力によってき裂進展と分岐が起こることを明らかとした. ②セラミック球の熱衝撃破壊発生温度差の統計的性質を明らかにするために,ワイブル分布に破壊クライテリオンを組み合わせることで欠陥寸法分布を導出した.その後,破面観察から得た製造欠陥寸法から推定した等価き裂長さのワイブルプロットと比較した.その結果,推定値と実験値はよく一致し,熱衝撃発生温度差のばらつきは製造欠陥のばらつきに支配されることを明らかとした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
熱衝撃を受けたセラミック軸受球の巨視的割れに関する基礎的データベースは十分構築できた.さらに研究計画通り力学的な観点から強度特性を評価して定量的に明らかにすることができた.現在,熱衝撃後の接触損傷特性(①接触強度,②接触強度のばらつき,③リングクラック発生位置)に関してデータベースを詳細に構築するとともに応力拡大係数を破壊クライテリオンとして力学的観点から調査を行っている.しかしながら,いまだ十分に解明できていない点がある.以上のことより,おおむね順調に進展していると自己評価した.
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今後の研究の推進方策 |
熱衝撃後の巨視的割れに関する評価は計画通りに進めることができたため,最終年度では,熱衝撃後の接触損傷についてデータベースを基に接触損傷特性について力学的な観点から明らかにする.特に接触損傷では,急冷に伴って極表面層に発生する微視的損傷に加えて加熱中の高温酸化の影響も受けていると予想しており,試験方法を工夫して実験的にアプローチすることも検討している.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定をしていた熱衝撃後の接触損傷に関する研究について,予想と異なる結果を生じたため計上した予算を執行できなかった.次年度,研究計画を見直して実施する.
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次年度使用額の使用計画 |
接触損傷試験について研究計画を再度見直しを実施し,再研究計画に沿って試験片購入や実験的アプローチによる消耗品に計上する予定である.
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