研究課題/領域番号 |
26820016
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研究機関 | 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
直江 崇 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 J-PARCセンター, 研究員 (00469826)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 超高サイクル疲労 / 熱弾性効果 / き裂検出 / 非破壊検査 / 超音波疲労試験 |
研究実績の概要 |
研究代表者らが開発を進める水銀を核破砕標的に用いたパルス中性子源では,高速度,且つ超高サイクル負荷(ひずみ速度約50[1/s], 繰返し数約4億回)条件下における疲労損傷が機器の寿命を支配する.本研究では,高ひずみ速度の繰返し負荷に対する耐久性評価とその診断技術の開発を最終目的とし,パルス中性子源の水銀を包含する容器構造材であるオーステナイト系ステンレス鋼に対して,高ひずみ速度,且つ超高サイクルの疲労試験を実施し,通常の疲労との比較考察を行うと共に,疲労過程で生じるであろう微小き裂から主き裂に移行する過程を非破壊的に捕らえる方法を提案する. 研究2年目である平成27年度は,容器構造材であるSUS316L,及び照射による力学特性変化を模擬した圧延率の異なるSUS316L冷間圧延材の室温での疲労データの構築を継続することに加えて,使用環境を考慮した高温(250度)での疲労試験を実施し,高温では加工度に依存せず著しい疲労強度の低下が生じることを明らかにした. さらに,研究初年度に観測された疲労き裂の発生に起因する試験片表面の急激な温度上昇について,試験片形状を砂時計型から温度分布の計測に適した平板型試験片を用いた疲労試験を実施し,最高温度を示す位置が,疲労き裂の進展に追従して移動することを観測した.また,温度上昇メカニズムについて数値解析を用いた検討を実施し,き裂部分の摩擦とき裂周囲の塑性変形による温度上昇の程度について比較した結果,塑性変形による温度上昇が支配的であることを明らかにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究初年度に観測された疲労き裂の発生時に試験片の表面温度が急激に上昇する現象について,詳細を調査するために,砂時計型の試験片から温度分布等の観察に適した平板型試験片に変更すると共に,き裂の発生箇所を限定するために切欠きを付加した.2次元温度分布計測,及び数値解析を実施し,温度上昇のメカニズムを究明するための検討を実施し,温度上昇の支配因子がき裂先端の塑性変形であることを明らかにした.次年度は,温度分布の計測からき裂を非破壊的に検出するための手法の具現化を継続する.
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今後の研究の推進方策 |
今年度明らかにしたき裂進展と温度上昇の関係について,さらに詳細を調べるために,2次元温度分布計測の時間及び空間分解能を向上させて温度分布からき裂の進展量及び進展速度の評価を実施し,非破壊検査手法の具現化を試みる.
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次年度使用額が生じた理由 |
超高サイクルまでの疲労試験データの取得,及び平板試験片の設計に時間を要し,年度半ばに製作予定であった溶接試験片の設計が遅れたため.
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次年度使用額の使用計画 |
安定的に疲労試験を実施するための予備超音波ホーンの購入,溶接試験片の製作を予定している.超高サイクルの疲労データの構築と,温度上昇からの非破壊診断について検討を継続する予定である.
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