研究課題
優れた高温強度,耐食・耐薬品性を有するニッケル基合金インコネル718は,航空宇宙産業や原子力産業などの分野で近年需要が急増している材料であるが,切削加工が極めて困難な“難削材”であり,特に高速切削加工時の工具寿命は極めて短命となる.こういった現状を打破するために,本研究では超耐熱合金の高速切削加工の実現に対して大きな期待が寄せられているCBN工具に対し,“工具-切りくず間のトライボロジー特性に着目し,従来知見とは全く逆に工具表面に微細な三次元周期構造を付与するという新しいコンセプト”を導入することで,インコネル718の高速・高能率加工において優れた耐凝着性や耐摩耗性,潤滑性を発現する高機能CBN工具の開発を目指している.本研究では,まず依然として不明な点が多いインコネル718の高速切削加工におけるCBN工具の損傷メカニズムを明確化するため,切削速度300 m/min~500 m/minでの二次元切削加工実験を実施するとともに,加工後の工具にイオンミリング処理を行い,工具断面側からのSEM-EDX分析を行った.その結果,切削速度300 m/min以上の高速切削速度域においては,切削初期の段階では熱的負荷にともなう拡散摩耗によって摩耗が進行するのに対し,切削距離が一定以上に達した以降は凝着物の脱落にともなう工具母材の剥離によって急激に工具損傷が進行することを明らかにした.さらに,明確化した摩耗のメカニズムに基づいて,CBN工具の表面構造に着目した検討を行った.そして,逃げ面に微細周期溝溝構造を有する切削工具を開発し,その加工特性を評価したところ,通常の工具と比較して開発工具は極めて優れた耐摩耗性を発現することを明らかにした.
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The International Journal of Advanced Manufacturing Technology
巻: online available ページ: 1-9
10.1007/s00170-015-8006-1