電子機器用におけるガラス材料の化学機械研磨による平坦化には、酸化セリウム砥粒を水に溶かしたスラリーが用いられている。セリウムは海外でもごく一部の地域に偏在しているため安定供給が難しく、酸化セリウム砥粒の使用量低減が強く求められている。そこで、計算科学シミュレーションによるセリウムの使用量を減らした新規代替砥粒、またその研磨性能を向上させるための分散剤の理論的設計が求められている。本年度は、TiO2表面上に担持したCeO2ナノクラスターに着目し、TiO2担体へのNやFといった異元素の添加が、CeO2ナノクラスターのガラスに対する化学反応活性に与える影響を検討した。その結果、F添加することでCeO2クラスターにおけるCe原子の電荷が減少することが確認された。これまで得られた知見から、この電荷の減少はガラス基板のSi-O結合を弱めるのに有効と考えられる。また、高いガラス研磨性能を示す分散剤を明らかにするスラリー中における砥粒の分散シミュレーションを行うため、高いガラス研磨性能を示すCaZrO3砥粒と分散剤であるポリアクリル酸間の反応プロセスを第一原理計算によって検討した。ポリアクリル酸のCaZrO3表面上における吸着状態を第一原理計算によって計算することで、ポリアクリル酸とCaZrO3間のポテンシャルエネルギー曲線を得た。得られたポテンシャルエネルギー曲線をMorseポテンシャルでフィッティングすることで、粗視化された砥粒と分子間の適切なポテンシャルパラメータを決定した。そのパラメータによってスラリー中におけるCaZrO3砥粒の分散シミュレーションに成功した。
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