研究実績の概要 |
【マイクロナノマシンの設計・作製】 マイクロファブリケーション技術を用いることで, 10マイクロメートル以下の幅の微小なカンチレバーを2つ集積したMEMSデバイスを開発できた. 2つのカンチレバーを集積したデバイスの開発が成功したことによって, 摩擦力だけでなく垂直抗力も同時に高精度(サブnN)で測れる実験系を構築できた. 摩擦力と垂直抗力の計測によって, 摩擦係数の計測が可能になる. すなわち摩擦係数の値の変化と, 真実接触面の変形を直接関連づけられる実験系を開発できた. 構築した実験系を用いて, 試しにAgをTEMにて観察した. さらに, 摩擦力と垂直抗力をリアルタイムで計測しながら, 接点の変形をナノスケールで観察できた. 目標とする精度で観察ができる実験系であることを確認できた. 【固体潤滑材の観察】 Agの接点を観察した. なぜならAgは固体潤滑材として用いられており, 固体潤滑材とそうでない材料を比較する事で, 固体潤滑材の変形の特徴やエネルギー散逸の特徴を定量化するためである. 次に紹介する物理量に注目する事で, 潤滑の機構解明に向けた新たな知見を獲得に必要な量を計測した. その量とは具体的に, 形状, 結晶の向き, 接触面の面積の変化や, 仕事, 表面エネルギーの変化などである. そのほかにも様々な材料をまず観察してみた. DLC, Ru, Ptなどである. 今後は, こうした様々な材料の特徴を理解し, 定量的に比較する必要がある.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
数N/mの剛性バネ定数の2つの梁を集積したMEMS開発した. 試しにAgを観察した. その結果, 目標の精度であるサブnNの精度を実現できた. 研究の計画を大まかに分けると, (1)MEMSの開発, (2)接点の観察, (3)RuOの観察の3点である. 今まで(1), (2)までできた. 研究は予定通り進捗している.
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今後の研究の推進方策 |
固体潤滑材とそうでない材料を比較する事で, 固体潤滑材の変形の特徴やエネルギー散逸の特徴を定量化するためである. 本研究は真実接触面を直接観察できる利点がある. この利点を活かして以下の3点に注目する事で, 潤滑の機構解明に向けた新たな知見を獲得する. (a)潤滑材とそうでない材料とを比較し, 潤滑材の真実接触面の変形の特徴を理解する. 変形の特徴とは具体的に, 形状の変化, 結晶の向きの変化, 転位(=結晶内部にある欠陥)の動き, 真実接触面の面積の変化, 真実接触面にかかるせん断応力である. (b)仕事, 表面エネルギーの変化, 真実接触面の形状変化によるポテンシャルエネルギーの変化をそれぞれ計測し, 定量的に比較する事で, エネルギーが散逸する機構を微視的アプローチから明らかにする. (c)以上の知見から, 摩擦を低減するために必要な表面の特性と特徴を提案する
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