研究実績の概要 |
(1) MEMSの開発 : 2つの梁を集積したMEMSを新たに開発した. このMEMSを組み込んだ実験系を用いることで,2つの梁の働きで,単突起にかかる摩擦力・垂直抗力を計測しながら接点の形状変化を観察できた. さらにそれぞれの梁の寸法を適切に設計することで,サブnNの精度で計測できるようになった. 目標にしていた精度を備えた実験系の開発に成功した. この結果は,トライボロジストにて解説記事として投稿した. またトライボロジー学会奨励賞を受賞した. (2) ナノ単突起の摩擦 : ナノスケールに尖られせたAgの突起同士を接触させることで,Agの単突起の摩擦をナノスケールで観察した. 摩擦力/垂直抗力を計測しながら,真実接触面積の変化を計測できた. 力の変化と真実接触面積の変化を直接関係づけることで,摩擦係数がいかにして決まるかを微視的なアプローチから考察できた. ただ,計測したナノスケールの計測結果をそのままマクロスケールに拡張すると,矛盾が生じることも分かった. さらに実験結果をJKRモデルという今まで広く用いられてきたモデルでシミュレートしようと試みた. しかしナノスケールの接点は常温でも接着することが今回の実験で分かり,JKRモデルはこの常温接合の効果を含んでいないので,JKRモデルだけではナノスケールの実験結果を再現できないことを実証した. この結果は,国際学会MNE2016およびMIPE2016にて発表した. (3) Ag以外の材料(Fe, PTFEなど) : Ag以外にもFe, PTFE, Pt, Ruなど様々な材料を観察した. 摩擦力/垂直抗力/真実接触面積といったパラメータに注目し,定量的な違いを獲得できたが,今回の実験結果はマクロスケールにおいてどこまで一般的かまだ十分に解明できていない. 予定以上の成果を得てきたが,同時に多くの課題を新たに発見した.
|