摩擦面全域において摩耗粉の発生とその成長を観察することが可能な,ナノレベルの分解能を有する摩擦面その場観察装置を開発した.主な観察装置には,広視野レーザ顕微鏡を用いた干渉計による実験系を構築し,その可能性について検証した.その結果,摩擦面間距離については,10mm幅にわたる視野を有し,かつナノレベルの観察が可能である事がCNT膜およびSiCウエハを用いた実験により示された.特に,垂直に配向したCNTの傾倒による数十nmオーダーの形状変化を計測することができたことから,高さ方向に関してナノレベルの分解能を有することが示された点が顕著な成果である.その後,摩擦力を接触面に負荷した場合については,接線力負荷によるCNTの傾倒による面間距離の変化を観察され,摩擦力負荷による摩擦面の数十nmオーダーの形状変化を観察可能であることを示した. また,装置の水平方向分解能がレーザースポットに左右されるため,およそ1ミクロン程度の水平方向分解能を有する.そのため,この装置では,サブミクロン以下の面積を有する接触点についての観察の可否が課題となった.この課題について,レーザースポット内にあるナノ接触点の平均的な高さ情報が,実際の接触点の挙動と整合しているかどうかについて検証を行うこととした.その方策として,より高分解能なAFMによる形状計測および接触熱抵抗計測による熱伝達特性の計測を行い,接触熱伝達率の面圧依存特性と,本装置で観察した真実接触面積の面圧存性特性が一致する結果が得られた. 以上から,約2ミクロン以下のレーザースポット内に複数存在するナノ接触点の個別観察はできないが,これらの接触点の形状に関する平均的な情報を捉えることが可能であることが示された.
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