研究課題/領域番号 |
26820032
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
山田 崇恭 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (30598222)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | トポロジー最適化 / 格子ボルツマン法 / レベルセット法 / 最適設計 / 計算力学 / 構造最適化 / 随伴変数法 / 設計工学 |
研究実績の概要 |
本年度は,格子ボルツマン法を用いた流体解析に基づき,流れ場のトポロジー最適化法を構築した. 最初に,形状表現方法としてレベルセット法を,流れ場の解析方法として格子ボルツマン法を採用した数値解析アルゴリズムを開発した.具体的には,格子ボルツマン法の解析格子とレベルセット法の離散化に用いる有限要素法の節点を対応させることで,適当な解析結果を得られることがわかった.また,構造により占められる領域の扱い方法の検討も行った.構造により占められている領域においても,格子ボルツマン法の格子が存在するが,流体により占められている領域に対して影響を及ぼさないようにアルゴリズムを拡張する必要がある.本研究では,構造により占められている領域の流速を零となるように,平衡分布関数を定義し,数値解析アルゴリズムを構築した.さらに,数値解析による検証の結果,その仮定に基づく結果と,通常の場合による結果を比較して,流れ場の分布がほとんど至る所で一致することを確認した.ただし,より厳密には,壁面での滑り無しの境界条件を加える必要があることもわかった. 次に,最適化問題の定式化と感度解析を行った.なお,感度解析の方法として,随伴変数法を用いることで,計算時間の大幅な短縮を可能とした.さらには,離散化前の方程式に基づいて感度解析を行うことで,随伴方程式においても格子ボルツマン法の数値解析アルゴリズムを適用可能となる時間発展方程式の導出に成功した. 構築した数値解析アルゴリズムと最適化問題の定式化に基づき,トポロジー最適化アルゴリズムを開発した.最適化アルゴリズムとしては,研究代表者がこれまでに構築してきた方法論である,レベルセット法に基づくトポロジー最適化を用いることとした..
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
格子ボルツマン法に基づくトポロジー最適化法の基本的な考え方を明確化し,具体的な数値解析アルゴリズムと,最適化アルゴリズムを示すことができた.さらに,数値解析により,開発した方法論の妥当性を示すことができた.すなわち,有限要素法を用いた場合の結果と,本研究により開発した方法論で得られた結果は,同様の最適構造が得られることを示した.さらには,基本的な考え方を三次元問題に拡張することにより,最適化アルゴリズムにより,三次元問題への展開が可能であることも示した.
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今後の研究の推進方策 |
熱流体問題への展開が今後の課題である.熱流体問題への拡張において,これまでの方法論との大きな相違点は,速度分布関数を複数定義する必要がある点である.具体的には,構造により占められている領域において,熱に関する速度分布関数の定義について検討する必要がある.さらには,複数の速度分布関数が存在する場合の設計感度の導出方法についても検討する必要がある.初年度に構築した方法論により得られた知見に基づき,連続変数系に対して随伴変数法を適用する方法について検討を行う.問題が生じた場合においては,単一の速度分布関数の場合と比較した場合の相違点を中心に,修正方法の検討を行う. 設計感度の導出後,具体的な最適化アルゴリズムの構築を行う.トポロジー最適化の方法として,研究代表者らが開発したレベルセット法に基づくトポロジー最適化を用いることとする.これにより,これまでに開発してきた構造解析との連成問題等に拡張が可能となる. 二次元のベンチマークモデルに適用し,方法論の妥当性を検証する.さらには,三次元問題等の大規模問題への展開可能性についても検討する.また,等断面制約等の幾何学的制約条件を考慮することにより,より製造性の高い形状が得られる.これまでの知見に基づき,幾何学的制約条件の考慮可能性についても検討し,より実用性の高い最適設計法の開発を目指す.
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は,定式化を含めた基礎検討を中心とした研究を行った.そのため,大規模並列計算を必要とする実モデルの詳細な検討を次年度にまとめて行う事にした.これにより,より効率的に研究を遂行することが可能となる.
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次年度使用額の使用計画 |
初年度購入予定であった,計算機を年度中旬頃に購入を予定している.年度の中旬から後半にかけて,大規模計算を実施し,実モデルでの方法論の検証を行う計画である.
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