研究課題
高い熱・酸化安定性と不揮発性を示すイオン液体は高温・真空または極微少量と行った条件下においても有効な潤滑面を形成することが期待される。本研究は外部刺激応答性分子を導入した多孔質シリカ相をイオン液体保持層とし、イオン液体の安定的な保持と能動的な潤滑特性制御を行うことを目的とする。本年度はシリカ界面におけるイオン液体の潤滑特性の検証を行った。鋳型界面活性剤としてPluronic F127を用いて前駆体溶液を調製し、これをスライドガラス上にスピンコートした後、鋳型を加熱除去する事により細孔径7 nm程度の多孔質シリカ層を形成した。また、潤滑剤としてフッ素を含むイオン液体1-Ethyl-3-methylimidazolium trifluorosulfonylimide(EMIm-TFSI)またはハロゲンフリーイオン液体である1-Ethyl-3-methylimidazolium methylphosphonate(EMIm-MePhos) をガラス界面に導入し、ガラス面間における潤滑特性を検証した。その結果いずれの場合も同等の低摩擦特性が得られた。また測定後のガラス界面においてEDX測定を行った所、TFSIアニオンを含むイオン液体の場合は摩擦後の表面にフッ素に由来するピークが観測される一方、EMIm-MePhosの場合には見られなかった。したがって、ハロゲンフリーイオン液体を用いる事により、計画において懸念されたトライボ化学反応により生じるハロゲン化物由来の腐食を抑制できるものと考えられる。
3: やや遅れている
当初の計画ではSiO2表面の多孔質化による摩擦低減を想定していたが、多孔質膜の形成によるラフネス改善の条件検討が必要となったため、時間を要した。そのため、本研究の目的とする外部刺激応答性分子を利用した潤滑特性の能動制御の検討に遅れが生じた。
多孔質シリカ層を形成し、その内部に外部刺激応答性分子としてアゾベンゼン分子を導入することで光刺激による潤滑特性制御について検証を行う。
当初の予定よりも試薬使用量の抑制等により予算を削減できたため
次年度における物品購入等に充てる
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