研究実績の概要 |
最終年度は潤滑特性の能動制御について検討を行った。イオン液体を含む多孔性材料としてpoly(N,N-diethyl-N-(2-methacryloylethyl)-N-methylammonium bis(trifuloromethylsulfonyl)imide) (poly-DEMM-TFSI)およびポリメチルメタクリレート(PMMA)から構成されるダブルネットワークイオンゲルを作製し、潤滑特性の温度依存性を検証した。はじめに光開始剤と架橋剤および溶媒としてイオン液体を含む重合液中でDEMM-TFSIを光ラジカル重合し、ファーストネットワークとしてpoly-DEMMTFSIゲルを得た。続いて、得られたゲルを光開始剤と架橋剤を含むMMAの重合液中に浸漬・膨潤させたのち、これを光ラジカル重合することでダブルネットワークイオンゲルを合成した。 得られたダブルネットワークイオンゲルの潤滑特性評価に当たり、対向面を10mmφがガラス球としてボールオンプレート型摩擦試験機で摩擦試験を行った。摩擦係数のすべり速度依存性から得たストライベック線図は温度増大に伴い低摩擦側へシフトする傾向が得られた。この結果は、温度増大に伴うポリマー表面の凝着力低減またはイオン液体の粘度減少によるものと考えられる。そこでイオン液体粘度の温度依存性をレオメータにより測定し、潤滑特性評価の結果を補正したところ、ストライベック線図は同一曲線上に収束しなかったことから、温度増大に伴う摩擦係数減少はポリマー凝着力の低減に伴うものと考えられる。これにより、外部温度制御による潤滑特性の能動制御についての指針が得られた。
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