平成27年度においては,非劣解集合の評価指標の定式化に取り組んだ.得られた非劣解集合を評価する場合,1つの指標で適切に評価することは困難である.非劣解集合に求められる特徴には収束性や多様性などが挙げられるが,多様性は厳密には目的空間での広がり,解の分布の均一性,密度といった特徴が含まれている.IGDやHypervolumeのような既存の評価指標には複数の影響が含まれてしまうため,誤解を招く可能性がある.非劣解集合の特徴を正確に調べるためには,それぞれの特徴を独立に測る評価指標を用いることが必要である.様々な評価指標を検討した結果,収束性,広がりについては既存の評価指標が正しく評価できることがわかったが,一方,均一性に関してはこれまで提案されている評価指標では正しく評価できない場合があることがわかった.そこでNSGA-IIで用いられている混雑距離の標準偏差を用いることを提案した.また,混雑距離の平均値を用いることで密度を測る指標になることも加えて提案し,人工非劣解集合,様々なテスト問題を用いて評価を行い,その有効性を示した. 実問題の多目的最適化問題は制約条件、設計変数が多く、当初は実行可能解自体を見つけることが困難であったが,昨年度の工夫により多数の非劣解集合を作ることができた.得られた非劣解集合を用いて感度解析を用いた定量評価法の研究を進めた.本問題は多数の制約条件、多数の変数があるため、得られた結果の評価が困難である.そこで計算コストの大きな各制約条件を多項式回帰モデルもしくはRadial basis Functionで近似し,制約条件と変数間の感度を離散的に求め、感度解析結果を要約した可視化を行う事で変動の大きな要素を容易に確認できる事を示した.
|