本研究は,マイクロサイズ(1マイクロメートルオーダー)・ナノサイズ(サブマイクロメートルオーダー)の微小孔を通過する複雑流体の流動特性を圧力損失測定により精密に検討することが目的である. 計画の最終年となる平成28年度は,これまでに完了していない複雑流体を用いた実験(1マイクロメートルオーダーの微小孔を通過する界面活性剤水溶液,高分子水溶液)を実施した.界面活性剤水溶液の場合,添加する対イオンとのモル濃度比により流動挙動が異なり,界面活性剤の種類により大きく異なることを明らかにした.一方,高分子水溶液の場合,比較的濃度の高い水溶液において,圧力変動が大きくなる不安定挙動を確認することができた.染料を混合した試験流体による可視化実験を行い,微小孔上流部に生じる不安定渦を確認することができ,試験流体の種類により大きく異なることも明らかにした.この特異挙動と圧力挙動がおおむね対応することから,本現象が上流部の不安定挙動に起因する可能性を考察した.また,希薄濃度の場合であっても,不安定挙動が発現し,マクロサイズの流れ場とは異なる現象を確認することができ,代表長さが1マイクロメートルオーダー,もしくは,サブマイクロメートルオーダーになると,弱い粘弾性であっても流れに強く影響する可能性を考察した. なお,計画の最終年であるため,研究成果の発表も重点的に行った.これまでに得られた結果を基にして,査読付き論文発表(6報),国際会議発表(1件),国内学会発表(9件,関連内容を含む)を行った.特に,国際雑誌への論文投稿を積極的に行った.
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