研究課題/領域番号 |
26820045
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
高木 洋平 大阪大学, 基礎工学研究科, 助教 (40435772)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 相分離 / スピノーダル分解 / 乱流 / エネルギーカスケード / 直接数値計算 / 乱流制御 / 組織化構造 |
研究実績の概要 |
"乱流"を活用して共連結構造などの自己組織化構造を持つ機能性材料を創成するために、二成分以上の組成から成る混合流体が急冷によって相分離する現象(スピノーダル分解)と乱流場との関連性を調べた。数値的な検討して、相分離を伴う一様等方乱流の直接数値計算コードの開発を行った。開発した計算コードの妥当性を検証するために、まず相分離を伴わない流体計算のみの解析を実施し、既往の数値的研究と同様な結果が得られることを確かめた。さらに相分離現象を記述するCahn-Hilliard方程式を連立した計算コードを開発し、相分離による組織化構造の粗大化過程が適切に表現され、同時に乱流エネルギーのカスケード過程が阻害されていることを確かめた。数値計算で用いる相分離に関する物性値パラメータを決定するために、常温で相分離が起こる3-メチルペンタン+ニトロエタン(3MP+NE)を対象とした相分離実験装置を設計した。相分離発現時の散乱強度から相分離相関距離を算出する測定を平成27年度に実施する予定である。概算によって求めた物性値パラメータから対応する実験を行った結果、本解析対象のような高シュミット数流体では既往の低シュミット数流体の相分離乱流に比べて相分離による乱流生成抑制効果が高いことがわかった。また、相分離の効果が現れるスケールはシュミット数に依らずエネルギースペクトルの低波数領域(大スケール構造)で見られ、この発現スケールを高波数領域に移動させることで組織化構造を変化できる可能性を見いだした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題では数値的な検討と実験による研究計画から成り立っている。基本となる数値計算コードの開発は概ね終了しており、実在系を対象とした数値解析も順調に進展し、計算データの解析からエネルギースペクトルのスケーリングや乱流構造の抽出が適切に行われており、相分離乱流現象の基本的性質が明らかになりつつある。一方の相分離実験では装置設計や測定法の検証に時間を要しており、実験データの取得が当初計画より遅れているが、数値解析による見積から期待される実験結果の見通しが立っており、随時実験データと数値解析データを照らし合わせることによって当初の研究目的を達成可能と判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
数値計算による解析では計算コードの開発が概ね終了したが、高シュミット数・高レイノルズ数の流体を対象とした解析を行うためには高解像度の計算格子及び長時間の計算ステップ数が必要と成るため、大規模計算機(スーパーコンピュータ)を活用して実計算時間の短縮を図る。並列計算に対応するための計算コードの書き換えについては、数値計算ライブラリを活用して部分的な改良を進める。相分離実験に関しては、相分離相関距離の測定法について検証を終了させた後に、常温での測定が行いやすい試料に対して実験を行う。実験では撹拌の回転数を変化させることによってレイノルズ数を容易に変更できるので、レイノルズ数依存性をまずはじめに検討し、その後にシュミット数依存性を試料変更によって検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度に予定していた実験装置の製作及び測定機器の導入が遅れたため、該当物品及び消耗品の購入を平成27年度に行う。
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次年度使用額の使用計画 |
相分離実験装置の一部であるフォトマルチプライヤー及びフォトンカウンタを平成27年度に導入し、相分離相関距離の測定を行う。
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