"乱流"の能動的活用として、自己組織化構造を持つ機能性材料の特性を流体操作によって制御することを目指した。二成分以上の組成からなる混合流体は高温の混合安定状態から過冷却などの熱力学的不安定性によって相分離(スピノーダル分解)が発生し、各成分に分離する際に特徴的な自己組織化構造(共連結構造)を形成する。この構造が形成される過程に対する流動場、すなわち乱流場が及ぼす影響を検討するために、攪拌操作中の流体を単純化した一様等方乱流場に相分離の寄与を考慮した数値解析を実施した。支配方程式は相分離過程を表現できるCahn-Hilliard方程式と非圧縮性流体のNavier-Stokes方程式であり、両者をカップリングして自己組織化構造の時間発展を解いた。溶液としては過去に実験が行なわれている3メチルペンタン-ニトロエタン二成分系を対称とした。また、比較のために、流動なしの純粋な相分離、及び1成分系の相分離無しの乱流解析も行った。解析結果より、相分離による自己組織化構造は分離後の粗大化過程が乱流の影響によって抑制され、形成させる構造は引き伸ばされた層状構造となることがわかった。これは触媒などに利用可能な多孔質体構造の表面面積を流体操作によって向上できることを示している。また、相分離と乱流場の相互作用が発生するのは流体中の比較的大きい渦構造に沿って発生しており、乱流の強度指標であるレイノルズ数を変更することによっても構造の変化を引き起こせることが明らかになった。
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