研究課題/領域番号 |
26820050
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
大友 涼子 関西大学, システム理工学部, 助教 (00726862)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | マージネーション / Stokes flow / 粒子充填層 / 空隙分布 |
研究実績の概要 |
本研究は管内流れ中で変形する物体周りでの微小粒子の挙動について調べることを目的とし,1)管内流れ中での物体の変形プロセス,2)その間隙を流れる微小粒子の懸濁液の移動プロセスの2段階に着目して進められている.平成26年度には当初の研究計画を変更してプロセス2)に対する実験および数値解析を行った.平成27年度にはプロセス2)の解析をさらに継続して解析を行うとともに,プロセス1)に関しても研究を進めてきた. 実験では準二次元流路(幅5.0mm,厚さ0.8mm,長さ50.0mm)に球形のガラスビーズ(直径0.60~0.71mm)を充填し,その中を流れる微小粒子(直径15μm,69μmの二種類の蛍光微粒子)の懸濁液の挙動を顕微鏡により観察した.密度を調整した水とグリセリンの混合溶液に微小粒子を中立浮遊させて流量Q = 0.153 mL/minでガラスビーズ充填流路中に流した.粒径の異なる微小粒子を用いた実験結果から,サイズの小さな粒子は充填流路中の空隙部分を一様に流れるのに対し,大きな粒子は比較的大きな空隙部分に偏って流れる様子が観察された.こうした微粒子の流路内の分布を蛍光微粒子の輝度値を用いて定量的に表し,その時間変化について解析した.球形粒子充填層に加え,非球形の障害物が存在する流路のデザインがほぼ決定し,現在は細部について検討中である. 数値解析ではStokes近似が成り立つ系を仮定し,Stokesian dynamics法を用いた間隙を流れる流体中の微粒子挙動の解析を行った.前年度から継続して詳細な確認と修正を繰り返し,解析手法の妥当性を示すことができた.構築したコードを用いて,粒子層の間隙を移動する微粒子懸濁液の挙動をシミュレートし,粒子層の空隙率とその中を移動する個々の微粒子の速度および微粒子懸濁液全体の拡がり方との関連性について定量的に明らかにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度には実験システムの構築および数値解析コードの修正のために当初の予定よりも時間がかかってしまったため,それらを用いた解析については十分な結果を得るまでに至らなかった.しかしながら平成27年度には,前年度に構築した実験システムを用いて,微小粒子の空間分布とその時間変化,および粒子充填層の空隙スケールに対する微小粒子サイズの関係を明らかにするための基礎的な実験を行うことができた.さらなる考察および議論が必要ではあるものの,粒子充填層の間隙を流れる微小粒子の分布について定量的な解析を行うことができた.さらに今後の展開として非球形の障害物が存在する場合の微小粒子懸濁液の移動現象に着目するため,新たな流路の準備を進めた.当該年度中の完成は達成できなかったものの,大枠のデザインを決定し,あとは細部についてのいくつかの検討を残すのみとなった. また数値解析については,前年に引き続き慎重に解析手法の確認と修正を繰り返し,コードの妥当性が得られた.得られた解析コードを用いて,粒子層中を微粒子懸濁液が移動する現象をシミュレートし,粒子層の空隙率とその中を移動する個々の微粒子の速度および微粒子懸濁液全体の拡がり方との関連性を示すことができた.
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度にも引き続き粒子充填層を用いた実験を行い,微小粒子の空間分布とその時間変化,および粒子充填層の空隙スケールに対する微小粒子サイズの関係を定量的に明らかにする.実験を繰り返し行うことで結果のサンプル数を増やし,より一般的な知見を得られるように結果を整理していく.平成27年度に達成できなかった非球形の障害物が存在する流路に関しては,細部の検討を行い,流路を完成させる.球形流路と同じ流動条件で実験を行い,障害物の形状が微小粒子懸濁液に与える影響を考察する.また主流方向に対する障害物の向き(配向)にも着目して実験を行う. 数値解析に関しては,現在のコードで粒子層の空隙率とその中を移動する個々の微粒子の速度および微粒子懸濁液全体の拡がり方に関連性があることが示されたため,今後より統一的な知見を得るために,計算条件の再検討を行う予定である.具体的には特に計算領域の大きさを検討し,より大規模な計算を行うことと,粒子層の空隙率および懸濁液中の微粒子濃度の条件についてもより広い範囲の条件を設定する.これらの条件を見直した上で,さらに計算を行い,結果を整理する.シミュレーションによって,例えば流体とともに流れる粒子にどのような抵抗が作用するか等,実験では得られない情報を得ることができるため,それらを用いて間隙の空間分布特性と微粒子挙動との関係などについて考察する.
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度に実験のための新たな流路を完成させ,発注する予定であったが,その予定を年度内に達成できなかったことが大きな原因と考えられる.また平成26年度の進捗が予定よりもやや遅れてしまい,平成27年度に予定していた国際会議に参加しなかったことも次年度使用額が生じた原因と考えている.
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度の繰越金は,主に新たな流路の購入費用,および新流路を用いた実験に必要な備品費・消耗品費として計上している. 平成28年度には,上記の新流路を用いた実験のために,顕微鏡関連費,ポンプなどの備品費,消耗品費(流路用部材,ポリスチレン粒子,蛍光粒子,作動流体など)が必要となる.数値計算ではより大規模な計算を行う予定であるため,ワークステーションの購入を検討している.また最終年度であることから,研究成果発表のための国内学会および国際会議参加費,研究成果投稿料および別刷料を計上している.
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