本研究は管内流れ中で変形する物体周りでの微小粒子の挙動について調べることを目的とし,特にレイノルズ数の小さい粘性が支配的な系において,1)管内流れ中での物体の変形プロセス,2)その間隙を流れる微小粒子の懸濁液の移動プロセスの2段階に着目して進められてきた.平成26年度には当初の研究計画を変更してプロセス2)に対する実験および数値解析を行った.平成27および28年度には,プロセス2)の解析をさらに継続して解析を行うとともに,プロセス1)に関しても研究を進めてきた. プロセス1)では赤血球の変形挙動に着目し,管内流れ中における流体力による変形,および浸透圧差に起因する変形の挙動を実験により調べた.実験結果から,赤血球の形状変化を定量的に評価した.プロセス2)では,障害物の間隙を流れる微粒子懸濁液の移動特性を実験と数値解析により調べた.実験では,球形ガラスビーズを充填したmmオーダーの準二次元流路中を流れる微小粒子懸濁液の挙動を観察した.充填するガラスビーズのサイズ,流体に懸濁させる微粒子のサイズ,および流量を変化させ,障害物の存在下での微粒子懸濁液挙動について,特に流路内における微粒子の偏りやその時間変化に着目して整理した.数値解析ではStokes近似が成り立つ系を仮定し,Stokesian dynamics法を用いた間隙を流れる流体中の微粒子挙動の解析を行った.前年度から引き続き計算コードを構築して妥当性を確認した後,粒子層の間隙を移動する微粒子懸濁液の挙動をシミュレートし,粒子層の空隙率とその中を移動する個々の微粒子の速度および微粒子懸濁液全体の拡がり方との関連性について定量的に明らかにした.
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