研究課題/領域番号 |
26820055
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
清水 信 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (60706836)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 熱ふく射 / 波長選択性熱放射 / 高温 |
研究実績の概要 |
本年度はNi基超合金における高温下での赤外放射率上昇抑制のメカニズムの解明と1000℃以上での高い波長選択性を有する材料の開発を目的として研究を行った。これまでの研究結果から金属上への微細構造形成による熱放射スペクトル制御素子では高温において自由電子の移動度低下による赤外域での放射率上昇が見られた。一方Ni基超合金の自己組織化を用いて作製したものについては赤外放射率の室温時からの変化が見られなかった。 昇温後のNi基超合金の表面性状について走査型電子顕微鏡(SEM)、走査型プローブ顕微鏡(SPM)、X線回折法(XRD)、エネルギー分散型X線分光法(EDX)や各種光学特性測定手法を用いて解析した。SEMおよびSPMによる測定では昇温前と比べナノオーダーの析出物が観察されたものの大きな変化は見られなかった。また、XRDやEDXの結果は昇温前後で大きな変化が見られなかった。ただし、昇温後の光学特性の測定結果から表面に酸化物薄膜のようなものが形成されている可能性が示唆された。高温時に波長選択性が低下しなかったのは微細構造と薄膜による熱放射スペクトル制御効果が複合的に作用したことに起因していると考えている。 Ni基超合金の解析結果から酸化物薄膜を金属上に形成することで高い波長選択性を有する熱放射スペクトル制御素子が得られると考えられる。そこで酸化物薄膜を用いた高い波長選択性を有する熱放射スペクトル制御素子の作製を行った。Rigorous Coupled-Wave Analysis (RCWA)法を用いたシミュレーションより酸化物膜(HfO2)で金属薄膜(Mo)を挟み込んだ構造において高い波長選択性を持つことが示唆され、実際に作製した素子も同様の波長選択特性を示した。この素子は真空雰囲気下1000℃以上でも耐熱性を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究の目的である1000℃以上の高温下における高い波長選択性を有する熱放射スペクトル制御素子の実現において、今年度はNi基超合金における高温での赤外熱放射の抑制メカニズム解明とそれに基づく高い波長選択性を有する熱放射スペクトル制御素子の作製および評価を行った。 Ni基超合金の赤外熱放射抑制に関して、種々の解析を行った結果、表面に薄膜が形成されておりこの薄膜の効果によるものであることが示唆された。より詳細の解析を次年度行う予定である。このような薄膜構造を積極的に金属上へ形成し、熱放射スペクトルの制御を試みた。Rigorous Coupled-Wave Analysis (RCWA)法を用いたシミュレーションを行い高い波長選択性を有する構造を設計し、その結果を元に試料を作製した。作製した試料は高温下においても高い波長選択性を有しており、1000℃以上の真空雰囲気下において耐熱性を有することを明らかにした。 以上より今年度の研究においては放射抑制メカニズムの解明はより詳細な検討が今後必要であるものの、1000℃以上の高温下において高い波長選択性を有する熱放射スペクトル制御素子の作製および耐熱性の評価まで行うことができており、研究はおおむね順調に進展していると評価する。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の方針として、Ni基超合金の赤外放射抑制に関して表面の電子状態や雰囲気依存性の評価など、更なる詳細の解析によってメカニズムを把握していく必要があると考えている。それらの解析を通し、高温用熱放射スペクトル制御素子設計のためのより一般化された指針を示すことを考えている。 また今年度得られた薄膜構造による1000℃以上で使用可能な熱放射スペクトル制御素子において更なる耐熱性・耐久性の評価を行い、より高い波長選択性を有する素子の作製を行っていく。
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