食料と競合しないセルロースなどから合成が可能な新たなバイオ燃料として注目されているフラン類を熱機関に適用するため、それらの基礎燃焼特性を明らかにすることを目的として研究を行った。熱機関に適用する場合、基礎燃焼特性の中でも、燃料の自着火特性が重要であることから、急速圧縮装置を用いて、エンジン筒内の温度、圧力に近い燃焼場におけるフラン類の着火遅れ時間を計測した。エンジン燃焼場のような中・低温、高圧場でのフラン類の着火遅れ時間に関する計測データはなく、これらのデータはフラン類を熱機関に適用する場合に貴重なデータとなる。また、計測データを用いて、今後のエンジンシミュレーションに必要とされるフラン類の詳細化学反応モデルの検証を行った。 フラン類の中でも2.5-ジメチルフラン(DMF)に着目し、694-990 K、2.13-2.89 MPa、当量比1及び0.5、酸素濃度16%における着火遅れ時間を計測した。比較のため、オクタン価90相当のガソリンの着火特性を模擬するPRF90及びエタノールの着火遅れ時間も計測した。DMFの着火遅れ時間はPFR90よりも長く、エタノールよりはわずかに短いことがわかった。既存燃料よりも着火しにくいことから、火花点火機関などの熱効率向上に貢献できる可能性があることが示された。既存の詳細化学反応モデルを、RCMの圧縮過程及び熱損失を考慮した計算を行い検証したところ、概ね再現することを確認した。本研究では、さらに、中赤外のインターバンドカスケードレーザーを用いた燃焼過程で重要な中間生成物であるホルムアルデヒドの定量計測手法の開発も行い、既往の研究例が多いエチレン及びジメチルエーテルの燃焼場において定量計測手法の開発に成功した。中間生成物の定量計測データは詳細化学反応モデルの検証に活かされる。
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