研究課題/領域番号 |
26820060
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
中村 真季(服部真季) 東京工業大学, 理工学研究科, 産学官連携研究員 (70708510)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | すす再生過程低温化 / スス堆積過程モデル化 |
研究実績の概要 |
平成26年度に予定していた電気化学実験において,酸素のイオン化の過程が律速になっている可能性が高い事が明らかになった.酸素の供給に対して酸素のイオン化が追いつかないため,気相中の酸素濃度の増大に比例したOCVの変化が現れなかったと考えられる.またPtの含有量の少ないサンプルでは,Pt担持の内サンプルの場合と比較してスス酸化反応に大きな差は確認できない.そのためOCVの挙動についても大きな変化がない事が予想された. 六角セル構造フィルター特有の流入ガスの流れのモデル化を試みた.六角セル構造フィルターには特有の流れが2つある.それは,ガスが流入する流路からガスが流出する流路に流れる流れと,流入流路と流入流路の間の壁面を通り流出流路に流れる流れである.この特有な流れは,流体力学的に圧力バランスとダルシーの法則から定性的な説明ができるため,実験から得られた現象のモデル化を行い,数値解析をした.その結果,実験結果同様に流入流路同士が接するフィルター壁にもススが堆積する流れを発見した.数値解析の結果から流入/流出流路と流入/流入流路に堆積するススの厚みの時間変化,各壁面に対する空塔速度の変化,流量配分の変化等を明らかにした.またこのモデルに表面空孔内の空隙率の変化を取り入れたモデル化により解析をおこなった. これらの結果から,PMの堆積及び再生を自制的にコントロールできる可能性があることが示唆できた.また流入流路と流出流路が隣り合う六角セル構造フィルターに吸引式でメンブレンを塗布する場合には,均一に塗布できない可能性があるため,メンブレンの塗布に対し工夫が必要な事を示唆した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
電気化学実験において,酸素のイオン化の過程が律速になっている可能性が高い事が明らかになった.ナノスケールのススの酸化反応挙動の可視化に着手出来ていないが,可視化に向けた準備を行っている.また,六角セル構造DPFの特有の流れが,モデル化と数値解析から明らかになった.このモデルに表面空孔内の空隙率の変化を取り入れたモデル化により解析をおこなった.PMが初期に堆積する表面空孔の空隙率分布を考慮した空塔速度を導入することで,捕集初期の圧力上昇からケーキ層の圧力上昇への遷移過程を表現できることを示した(学会発表2件, 論文掲載2件).PMの堆積の挙動を解析することで,今後,PMの堆積及び再生を自制的にコントロールできる可能性があることが示唆できた.これらのことから概ね順調に研究が進展していると思われる.
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今後の研究の推進方策 |
1)DPMFに即した実験系にてナノスケールのススの酸化反応挙動(可視化) 本研究ではPMの酸化反応挙動を高分解で観測するのが目的であるため,高分解能での測定が可能である作動排気型のETEMを用いてSiCナノ粒子表面でのスス酸化挙動の可視化を行う.更に走査型電子顕微鏡(SEM)と走査型透過型電子顕微鏡(STEM)を組合わせたSEM-STEMを用いて3次元的な可視化を行う.. 2)全焦点顕微鏡を用いた六角セル構造フィルターのPM堆積と再生過程の可視化 メンブレンを六角形セル構造の支持体のPM捕集面にコーティングし,スス再生の低温化を狙う.六角セル構造フィルターのPM堆積と再生過程の可視化とX線CT及びMRIを用いたDPF壁面内のガスの流れの可視化の二つに分けて研究を行う.PM堆積と再生過程の可視化では,特に流入流路間を隔てる壁の役割を明確にする.また,CO濃度やCO2濃度の測定から反応速度を見積もり,総括反応に関する活性化エネルギーを,メンブレンの有無により比較する.これらの実験ではディーゼル燃料から採取するススを一定時間捕集し質量を計測し,DPFM内に堆積するススの量の定量化して実験を行う. 3)X線CT/MRIを用いいた六角セル構造フィルター壁の流れの可視化 流体力学的には,ガスは流入流路から流入流路へ流れる事はない.つまり,流入流路/流入流路壁にPMが堆積するとき,ガスの流れは従来の様に壁に直行する方向ではなく,壁の内部を壁表面に平行な方向に流れ,流出流路へ流れていると考えられる.これは圧力バランスとダルシーの法則から定性的な説明がつくが,定量的な評価が不可能であるためX線CT及びMRIを用いてガスの流れを可視化し,PMの堆積の定量的評価が行い,最終的に再生過程において自制的制御後処理ができることが可能となる.
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