研究課題/領域番号 |
26820063
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
堀部 直人 京都大学, エネルギー科学研究科, 助教 (90583881)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 熱機関 / ディーゼルエンジン / 黒煙 / すす |
研究実績の概要 |
本研究は,圧縮着火機関において,比較的低い燃料噴射圧力を用いながら,従来のディーゼル燃焼に対してすす排出濃度を低減するため,燃料噴射終了時に発生するEntrainment Waveを用いて燃料と空気の混合を促進し,大量の排気再循環を用いることなく窒素酸化物と粒子状物質の同時低減を過濃とする燃料噴射条件の提案を目指している.初年度は,準定常期間のほとんどない少量噴射について基礎的な知見を得るため,コモンレール式燃料噴射装置を備えた急速圧縮膨張装置を用いて,比較的高温高圧の雰囲気場において,雰囲気圧力,噴射圧力,噴孔径が噴霧先端到達距離,噴霧体積,噴霧拡がり角に与える影響について実験的に調査した.その結果,噴霧先端到達距離は噴射開始から噴射中期頃まで時刻に比例して増加した後,時刻の0.5乗に比例するように推移し,噴射が終了する頃に,時刻の0.25乗に比例するように推移することなどを明らかにした. また,単気筒試験機関を用いて,吸気圧力およびスワール比を変更し,多段噴射を用いたディーゼル機関において吸気条件がアフター噴射の黒煙低減効果に及ぼす影響について実験的に調査した.その結果,スワール比が高いほどアフター噴射による黒煙低減効果が大きくなり,また,吸気圧力を高めるとその効果が大きくなることが明らかとなった.急速膨張装置で得られた噴霧に関する基礎的知見を用いて結果を整理することにより,黒煙が低減する条件が明らかになる可能性がある.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
単気筒試験機関を用いて黒煙低減効果が得られる噴射条件について考察するための実験結果が得られた.また,急速圧縮膨張装置を用いて,準定常期間のほとんどない少量噴射における基礎的知見を得ることができた.噴霧に関する基礎的知見に関しては精度上の問題が少しあり,条件が限られたものの,試験機関で得られた結果を考察するための重要なデータを得ることができた.
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今後の研究の推進方策 |
初年度は,当初予定を一部前倒しし,単気筒試験機関を用いて窒素酸化物および粒子状物質を同時に低減できる噴射条件について実験的に調査し,その条件について推論を行った.今後は,推論を実証するために解析モデルを用いた検討および実測データの充実に努める.そのために,数値解析手法の精度を高める必要があり,急速圧縮膨張装置を用いて少量噴霧に関する実験データを充実させる.また,これらのデータを総合して,比較的低い燃料噴射圧力を用いながら,環境影響物質の排出を極小とする燃焼を実現する燃料噴射方針を提案する予定である.
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